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<文中敬称略>

 
 北海道は神秘の国だね!

 旭 オス! お早々と・・・。

 ルリ子 ごめんなさいね。おそくなって、「十六歳」(※1)と二本でしょう?

 旭 売れっ子は違うね(笑)

 ルリ子 いじわるね、人が下手に出ているのに・・・。

 旭 オヤ、ルリちゃんワリカシ味なセリフを使うね。それは、それはそうと「十六歳」はどう・・・を?

 ルリ子 それ、どういう意味?

 旭 カングルんじゃあない、そのものズバリでいかがですか?

 ルリ子 そりゃあ、雑誌や何かではたちのルリ子が十六歳の役をやるなんて書いているけど、私の今までの役は、
     たいがい年上だったから、何となく、妙にいわれるけどサァ・・・私、俳優である以上、どんな役にも
     なりきれなきゃあ、ウソだと思うんだ。

  始まったな、知性あふれるルリちゃんが・・・。

 ルリ子 やめるワ、すぐ旭、茶化すんですもの・・・。

  どういたしまして、ルリちゃんのご意見に、旭といたしましてもお答えしますよ。

 ルリ子 それにさ、一つの過程を経たほうが、経験が豊富で、理解できると思うわ。

  モットモダァ、モットモダァ・・・。ルリちゃんが赤ちゃんの役でもやったら、きっと可愛いぜ(笑)

 ルリ子 旭ちゃんっていじわるね。

  ルリちゃんって、シックス・ティーン向きだね、純情ですぐふくれるしさ(笑)
   それはそうと、北海道のご感想は?

 ルリ子 旭ちゃん、私にばっか質問して!

  対談は二人でしているんだもの、こっちがきいたら、そっちがシャベルしくみになっているんだから・・・。

 ルリ子 そういえば去年の今頃も、北海道へ来てたわね。

  記憶力いいんだね。

 ルリ子 旭ちゃんと同じよ。

  北海道って、いつ来てもいいね、本当に詩的だものね、広い草原を、小さな汽車が音をたてて走っていく、
   まわりは、何もないんだ、そんな時、自然と対決する人間を感ずるな。

 ルリ子 私、心細くなっちゃうわ。

  女の子は弱虫だな、大丈夫、ナイトがいるからまかしときな。

 ルリ子 私、阿寒湖は神秘的でスキよ。なんとなく、ひきずり込まれそうで・・・。

  よせよ、そんなことされたら、映画終わらないぜ(笑)

 さいはての国に感じること

 ルリ子 北海道って来てみなければ、全然分からないんじゃないかしら?

  そりゃあ、そうだね、当たり前のことだけど、本当の事だね・・・
    北海道を歌った啄木のうたにもいいねのがあるね。

 ルリ子 「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれてカニとたわむる」とか「さらさらと・・・」なんて
     いっぱいあるわね。

  オレはどっちかというと、カニよりエビのほうが好きだな(笑)

 ルリ子 旭って食いしん坊ね。今、歌のこといってるのに・・・。

  どうも、どうも、カニしてよ。

 ルリ子 (爆笑)

   北海道には、何か開拓魂のようなものがあるしね。

 ルリ子 それでいて、とってものんびりしている面も感ずるわ。

   ある意味で自然と闘い、また、別の面で自然に順応していくってわけさ・・・。

 ルリ子 何か人生の教えみたい。

   そう、オレの考えに間違いない(笑)

 ルリ子 すぐそうなのね。

   本当に長い間、おつきあい願っちゃってさ。

 ルリ子 改まって、なあに?

   そういうわけじゃあないけどサ、“渡り鳥もの”と“銀座旋風児”、それに“流れ者”との三本の相手は、
   たいがいルリちゃんだものね、それに錠さんとは、いつも一緒だもの、なんか呼吸がぴったりするね。

 ルリ子
 お互いに、そこはかとない雰囲気があるのね。

   そうそう、ムードが大切だね。

 ルリ子 本当ね、そっちがオーバーなら此処はは控えめにと思うと、無理なくできるのですもの、シアワセ!

   ルリちゃんにしても、ゴキゲンでできるんだもの、オレは錠さんと、やっているとピッタリだな。

 ルリ子 そこがむずかしいけど大切なトコね、でもハラハラしちゃう時もあってよ。

   ルリちゃんにハラハラして、心臓悪くさせては、申しわけないけど、オレは、いつも人間の力でできるぎり
   ぎりのところまで演技としてやりぬいてみたいとおもっているんだ。

 ルリ子 そこが旭ちゃんのいいとこよ。本当に偉いワ、頭が下がる輪ワ。

   オヤ、オヤ、あぶない風向きになってきたぞ、何ぞ欲しいものあるんかいな(笑)

 ルリ子 トンデもないわ、本当に感心しているのよ、だから、私だって熊笹の中でも、夢中でかけだして、足中、
     傷だらけの時があるわ、血が少しぐらい出ても、旭ちゃんにくらべれば・・・なんともないわ。

 観光気分(?)でロケは愉し!

   ロケが多くって、なかなか、東京で遊べなかったね。

 ルリ子 そうね、この一年ロケづいてたわね、でも、地方のファンの皆さんの激励を受けて、本当に一生懸命やろう
      と思うわ。

   そうだね、毎度のことだけど、ロケ地は、すごい人出だものね、四国の時も、宮崎の時も、パトカーで送られた
    っけ・・・。

 ルリ子 映画の画面には一人一人いない、広々とした景色になってるけど、まわりは、大変な人の波ですものね。

   美しいルリちゃんを見ようとして・・・(笑)

 ルリ子 マイト・ガイを見ようとしてよ(笑)

   二人とも奥ゆかしいね(笑)

 ルリ子 それだけに、整理する人とか、カラミの人たち、本当に大変だと思うわ。

   ロケ、楽しいって云えばサ、佐渡ロケのスタイル、首にハンカチ巻いて、皮ジャンにシマのシャツにジーパンの
   いでたちに、半長靴をはいて出てきたら、次の日のロケで、見ている人の中に、そのスタイルの人がいること、い
   ること・・・(笑)

 ルリ子 本当におどろいたわ。“渡り鳥いつまた帰る”のロケの時ね。

   それも靴は皮じゃあなくって、ゴムの長靴さ(笑)うれしいね、ファンは・・・。

 ルリ子 そこが旭ちゃんの大衆性ってとこね。

   九州の宮崎ロケの時は、オスタちゃんが来ていて、ロケとかちあって、宮崎はお祭り騒ぎで大変だったね。

 ルリ子 そうね、旭ちゃんは“群集の中の太陽”で、志賀高原で、貴子さんにお逢いしたって、いってたわね。

   そうだっけ、あの頃は、島津婦人じゃあなかったっけ・・・。

 ルリ子 偶然に人にあうこと、わりにあるわね。

   ロケは、その土地、その土地のよさがあるから、それが生きるからいいんだね。

 ルリ子 それに、その地方の歌を旭ちゃん流に歌うから、ヨケイうけるのよ。

   「赤い夕陽の渡り鳥」の“会津磐梯山は、宝の山、(歌い出す)”あれなんかも好きだな。
   思い出すなあ、あの吾妻スカイライン・コースは・・・。

 ルリ子 いかすわね、日本にもこんなトコあるのかしら? と思ったわ。

 心温まるロケ先のエピソード

   そういえば流れ者シリーズの“海を渡る波止場の風”の桜島ロケは、どこを見ても、雄大にして一幅の絵画だっ
    たね。

 ルリ子 私、あの時、岸壁にぶらさがってこわかったわ。

   ホント、みんな心配そうだったね、でもまさか、ルリちゃんがあんなオテンバだとは思わなかったな(笑)

 ルリ子 旭のいじわる! あの時、私、本当に一生懸命かじりついてたのよ。

   本当にこわそうだったよ。

 ルリ子 ロケのエピソードをさがしら、きりないくらいあるわね。心温まって忘れられないこともあるわ。

   あそこの魚はうまかたとか?(笑)

 ルリ子 私、食いしん坊じゃあないわ、波打ちぎわで拾った小さな桜貝とか、高原で咲き乱れていたミヤマウスユキ
     草とか・・・。本当になつかしいわ。

   ルリちゃんって、割と女の子的だね。

 ルリ子 あら、今ごろ気が付いたの、オソイワ、今までレース編みしていたけど、秋になつたから今度は手芸よ。

   季節によって違うの?

 ルリ子 そうよ。立派なのを作って、上野の博物館に飾ろうかしら?

   大きく出たね。

 ルリ子 北海道の札幌に、ボーイズ・ピィ・アンビシャス(少年よ、大使を抱け)ってかいてあったもの。

   少女よデッケィことを云えなんてのは書いてなかったぜ(笑)

 ルリ子 希望は高く、身は低くですもの。

   オヤ、なかなか、むずかしいことをおっしゃいますね。

 なつかしいルリちゃんのお下げ髪

 ルリ子 話題転換、この前、雑誌の座談会でマコちゃん(※2)といっしょだったのよ、とっても着物美しかったわよ。
     裕ちゃん好みで、とってもよかったわ。

   日本の女の人は着物に限るね。

 ルリ子 何んか、落ち着くのかしら? 見た目にも、着たほうもそう思うのね。

   オレ、あまり、そろつとしたヤツは好きじゃないな。

 ルリ子 「絶唱」の時はカスリだったのよ。

   なつかしいね、ルリちゃん、おさげ髪だったものね。

 ルリ子 私、あの役大好きよ。「十六歳」の役柄はちょっと違うけど、そういった意味で女の主役映画でしょう?
     だから、がんばらなければ・・・と思っているわ。

   そうだよ。じょうだんじゃなく、がんばって下さい。(笑)

 ルリ子 また・・・、いじわるね。

 流行の波より安定感を

   オレのほうは、当分、「流れ者」と「渡り鳥シリーズ」と「銀座旋風児シリーズ」から、足も抜けそうもない
    けど、その中で、オレのアクションもの、日本の西部劇をつくるよ。

 ルリ子 そうよ、その中で最善の努力をすることが、大切なのよ。

   なかなか、おっしゃるようになったね。

 ルリ子 そうよ、旭の教えがいいんですもの。

   そうそう、そうこなくっちゃあ。

 ルリ子 なんだか、口はばったいようなことを、云うけど、その役をやりきらなくてはダメだと思うの。
     芸の虫になりたいわ。

   ルリちゃんの虫なら、たかられたいね(笑)

 ルリ子 茶化すのね。

   斉藤監督さんが云っているんだ「マイト・ガイという爆発的な名前から受ける強烈な若さではなく、ソフトに
    して、現代的な感じが強く、メチャクチャに暴れるというより、アクションのうちに哀愁味を出した方がいい」
    って云っているんだ。オレはその線にそってやっていくつもりだ。

 ルリ子 本当に、旭ちゃんの歌、イカスわ。

   はじめは、ただ好きなんで、歌っちゃったトコだけど、今は、本当に、一生懸命やろうと思っているよ。

 ルリ子 私、旭のズンドコ節が、一番好きよ、あの「一年前は、知らなんだ、半年前にも知らなんだ・・・
     (歌い出す)」

   ルリちゃん、オレよりうまいぜ。

 ルリ子 そうかしら?

   すぐ、そうきちゃうんだから・・・。

 ルリ子 本当に、なんともいわれない雰囲気があるんだもの。

   若い人ばかりじゃあないんだ、案外、お年寄りのファンがいるんだぜ。ケッサクなのは、歌が好きで映画を
    見るようになったなんてのもいるんだ。

 ルリ子 じゃあ、歌手としての小林旭君ってトコね。

   まったく、不思議なもんさ、何しろハヤリってヤツは・・・。

 ルリ子 そうよ、こわいくらい・・・流行の波に乗るってコトは、大切よ、でも、その底に地味なものがあってこそ、
     安定感があるんじゃあないかしら?

   ルリちゃんって、本当に、しっかりした娘さんだね。やはり、話し合いは、大切だね(笑)

 秋の渡り鳥は何という名前?

 ルリ子 今度は、この「大草原の渡り鳥」が終わったら、東南アジアロケもはじまるわね。

   裕ちゃんは、ヨーロッパへ行くし・・・日活は、まったく、はりきっているぜ。

 ルリ子 本格的“渡り鳥”になったわね。

   何鳥だろうね、十一月頃、南へ飛ぶのは?

 ルリ子 サンダーバードよ(笑)

   ええっ?

 ルリ子 だって、旭の車は、ライ鳥っていうんですもの。

   それよか、ルリ鳥のほうがきれいだよ。

 ルリ子 そうね、ルリ鳥のほうがいいわ。

   この人は、すぐに同化するね。

 ルリ子 なんにでも染まる白ですものね・・・。あまり悪いこと教えないでね。

   おっしゃいましたね。オレは、いつも先輩としてルリちゃんをお手本にしているんですから・・・(笑)

 ルリ子 だから、旭ちゃんは、いい子ね。

   コイツ! いや、いや失礼致しました。ところで、これからは、どうしたい?

 ルリ子 何を? どうしたいの?

 年をとれば ヨイヨイ・ガイ?

   まあ、仕事の面でも、ルリちゃんの日頃のことでもいいし、希望とか、抱負とか、なんかあるでしょ?

 ルリ子 云いたいけど、よすわ。

   何故?

 ルリ子 だって、失礼になるもの・・・。

   いよいよもって聞きすてならぬぞ。

 ルリ子 ダッテェ・・・!

   ぜひ、ぜひおっしゃって下さい。

 ルリ子 でもわるいもの。

   ブツゾウ・・・おだてたり、慰めたり、おどかしたりして、どうしてもきかせてくれよ。

 ルリ子 あのネェ。

   (わざと耳を近づけて)何んですか?

 ルリ子 私、大恋愛もの、やりたいの、それも「ロミオとジュリエット」のような悲劇ものよ。

   いいじゃあないの、きっと美しいよ、それがなんで、云えないくらい、わるくって、失礼なんだい?

 ルリ子 だって、日活の若手の俳優さん、みんな、ハズカシガリヤだもの。それに、旭ちゃんなんか、本当のラブ・
     シーンは、はずかしがり屋で、できないもの。

   オヤ、きめつけるね、オレだって役者だぜ。

 ルリ子 でも、「絶唱」は別で、渡り鳥シリーズの中のものは、タイガイ、暗示的なものばかりですもの、要するに
     、旭ちゃんのいいとこよ、テレるとこは。私、テレることもない、恥ずかしいことも知らない、図々しい人
     って、好きじゃあないわ。

   じゃあ、ほめられているって、わけかな。

 ルリ子 そう、単純なトコがいい面ね、旭ちゃんの・・・(笑)

   散々だね・・・オレの意見としてはだね・・・オレは、ルリちゃんのように、ませてないから、アクションもの
    を色んな面から、やっていきたいね。錠さんの悪役だって、憎らしいだけじゃあなくって、ムシロ、楽しく、
    ユカイになる奴だもの・・・。イイ者も、悪者も、陽気で、カラッとしている奴さ。

 ルリ子 そうね、みんな生地のままですもの。よい人ばっかしで、楽しんでしているようね。

   みんなと仲良しでいるのは、本当に楽しいね、いつまでもつづくといいね。
    第五百十七弾「亦(また)、亦亦のまたの渡り鳥、北海道へ」なんていって、オレが、チャンジイ(おじいちゃ
    ん)になっちゃうね。

 ルリ子 アキラちゃんのマゴがやるのね。

   マイト・ガイじゃあなくって、マゴ・ガイだね(笑)

 ルリ子 その頃、アキラは、ヨイヨイ・ガイかな?(笑)

   失礼な、オレは、いつまでたっても、若いぜ。ゴルフもやっているし、エキスパンダーで、体を鍛えているもの。
 
 ルリ子
 私、ほそいけど、シンが強いのよ。あんまり病気もしないし・・・。

   ルリちゃんのように、あんまり食べないし、病気もしないんだから安上がりだね。

 ルリ子  でも、私、お野菜の生とか、くだものをたくさん食べるわ。

   よくもつね。オレは、ごってり中華料理を食べて・・・。

 ルリ子  旭ちゃんは、よく食べて、遊んでるもの、じょうぶに育つわよ。

   それじゃあ、幼稚園の生徒なみだね(笑)

 ルリ子  何しろ、おたがいに体をきたえて、よいお仕事をしましょうね。

   大いに青春をエンジョイして、のちに悔いを残さぬように・・・。

 ルリ子  どうぞよろしく、ご指導を・・・。

   こちらこそ、終わりに至っても、オレたちは、奥ゆかしくって、エチケットを心得ているね(笑)

                         (資料:「別冊近代映画・大草原の渡り鳥特集」より)


 <文中の注:管理人>
  (※1)=「十六歳」
  浅丘ルリ子さん主演映画(1960)監督:滝沢英輔 
  玉川せん子=浅丘ルリ子 中根有治=葉山良二 本間節郎=長門裕之 他

 
 米軍基地が近い農村を舞台にしたもので、その中で中学三年生の玉川せん子の役。
  普段は明るい少女が次々と過酷な運命に翻弄され、最後にはトレーラー・バスに轢かれて死んでしまう。  

  (※2)=「マコちゃん」
  現石原まき子さん、当時は裕次郎さんとの結婚により、既に引退中。

 特集1 北海道ロケ便り へ
 

 特集2 斉藤武市監督インタビュウ へ

 

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