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「レコードが売れるってことは気分がいいね。街を歩けばパチンコ屋から聞こえるし、バーへ行けば俺のヤツがあるんだな」

これは、昭和36年当時の売れに売れていた頃の小林旭さんの弁。事実、先にも触れていますが、かつての全国の商店街は電柱にスピーカーが取り付けられていてBGMよろしく常に音楽が流されていました。その中で必ず「ズンドコ節」や「ダンチョネ節」が流れる。もしかすると「ズンドコ節」などは人が歩くリズムとして丁度良いのかも知れない(笑) 子供の頃に「ズンズンズンドコ」と合わせて歩いてみたこともある。それはともかく、小林旭さんの映画以外でも街中のシーンでは旭さんの歌が流れている。当時に制作され映画をご覧になればその歌の人気の勢いが想像できるでしょう。

当時のラジオで「S盤アワー」や「L盤アワー」というポピュラーミュージックを専門に流す番組がありました。私のあやふやな記憶では、こうした番組で小林旭さんの歌が流れていたのです。前者の番組がビクター系で後者がコロムビア系なので「L盤アワー」で聴いたものと思います。ヒット曲「黒い傷痕のブルース」や「白い夜霧のブルース」が流れていた記憶があります。両者はポピュラーミュージックですから、民謡路線以外にポピュラーのカバー曲も企画としてあったことが伺えます。当時のアルバム「アキラとウェスターン」や「ブルースをうたおう」「アキラでツイスト」などは明らかにその路線でしょう。また、未発売曲であった「さすらいの慕情」(『アキラ2』に収録)はザ・ピーナッツもカバーしているポピュラー曲です。こうしたことからポップスも歌える(他の歌もポップスアレンジですが)歌手としての存在。カッコイイヤツのイメージではありましたね。

そんな旭さんですが、歌のデビューの頃は慎み深く「全然音痴なんです。からっきし駄目です」なんて仰ってたそうです。昭和33年、本格主演第二作の『夜霧の第二国道』(フランク永井さんのヒット曲)でフランクさんと共演することになった旭さん。撮影を前に新宿の劇場にフランクさんを訪ねた。低音の魅力のフランクさんは、背が低いので旭さんを見上げるようにして「歌の方はどうですか」とたずねられて、旭さんの上の答えとなった次第です。
当時は男の低音の魅力ブームで、フランク永井さんをはじめ、水原弘さん(「黒い花びら」)、白根一男さん(「はたちの詩集」)、それに同じ日活の石原裕次郎さんも低音の魅力として売っていた。
そんな中で高音歌手といえば民謡出身の三橋美智也さんがいた。
旭さんがコロムビアに呼ばれてテストで歌った歌は三橋さんの「女船頭唄」だといわれている。立ち会った作曲家の船村徹先生は後に「まるで煙突のような声だな」と表現されています。高音の魅力で行こうと、このとき決まったそうです。

デビュー曲は「女を忘れろ」ですが、それ以外にも色々と曲は用意されていたらしい。その中でも若さをストレートにぶつけるこの歌がヒットしたのはうなづけますね。いきなりダイスを転がすなんて、これは映画的なイメージからでしょうか。後の『南国土佐を後にして』の映像にも繋がりますね。

高音の魅力で売り出した旭さんは、あれよあれよという間に映画と共に歌も売れました。そんな頃の昭和35年の秋に旭さんと三橋美智也さんの対談が雑誌の企画で実現しました。その対談から抜粋。

 


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■高音で売れっ子の二人が初対談!(部分的に抜粋)

小林旭さんは『大暴れ風来坊』の四国ロケの出発前でした。

小林:三橋さんはスリラー・ブームがくるとそういう傾向の歌(『壁』という曲)をやられるし、ロカビリー全盛にはロックをやる。立派だと思いますね。

三橋:そんなにおだてなさんな。こっちにだってあんたをほめる材料がいっぱいあるんだから‥‥

小林:こわいな。

三橋:映画ばかりじゃなく、歌の世界に足を入れて、一流の味を出してることが、まずほめはじめ。

小林:いや、一流なんて。シーチョウ(調子のよさ)だけで歌ってるんですから。

●ふたりの話は弾み、三橋さんが巡業先のバーで旭さんの『鹿児島おはら節』が流れていて、気持ちよく歌ってるから調子にのせられて思わず、ふだんの倍くらい飲んでしまったとのこと。旭さんが「そこがバーのツケめなんですね」と返すと、三橋さんは「ツケじゃなく現金で払って来たよ」とダジャレをとばすリラックスした雰囲気。

三橋:あんたはもっとでかいことをやったらいいよ。映画はすでに第一人者になってるんだしね。

小林:いや、まだまだです。だけど、日本の流行歌ってのは難しいですね。

三橋:ほんとに難しい。パーッと表に出したのを、もういちど裏返してからでないと小節が生きてこない。

小林:それでいて、アッピール(訴える)するところも大切だし…

三橋:そうそう。のびるところは、全身で歌い込まないと、どうしても心にしみて行かないんだ。ぼくなんか、体が小さいし、爪先まで声を出すつもりでね。あんた、体が大きい割に高い声を出してるねェ。

小林:低いのは苦手ですよ。

●二人の歌談義、クルマ談義、ゴルフ談義は続く。この対談の一部が当時のラジオ番組「平凡アワー」で流れたそうです。今でも録音が残っているならば聴いてみたいものです。

(この項、終わり)

資料:「平凡」 1960年12月号



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