「人生BBS」に書かれた、アキラさん、ジャンバールさん、マカオの竜さんの書き込みを編集し、まとめたものです。
 

旭を超えるつもりはない ・マカオの竜- 2005/06/08

 管理人さんの提案もあり、日活アクション全般について触れてもいいようなので前回で終わりと 思っていた高橋英樹と小林旭への思いいれとして今回は書いておきます。
 星の瞳をもつ男を、日活伝統不良少年映画として注目しました。吉永小百合が卓上ピアノで 伴奏し、高橋英樹が「♪だから俺たちゃつらいが明日を待とうぜ」と歌います。作品の詳細を 語るのが目的ではありませんので、なぜ歌うのかは省略しますが、日活スターは歌うのです。 アクションスターとして、激流に生きる男の主演後、霧の夜の男に続き、男シリーズとして製作 公開されたものです。しかし、見事に少年院帰り男として登場し、期待通りの不良少年として 高橋英樹は自分の前に登場したのです。等身大のヒーローとして。この英樹が後、小林旭と多く の共演をすることになります。

 その高橋英樹がいつのことだったか、あるテレビ番組で旭のこと を語りました。最初の破産後、がっかりしているだろう、少しでも励ましてやろうと二谷英明ら
との俳優仲間で一緒に飲もうと誘ったそうです。旭は当日外車で颯爽とあらわれ、おーみんなど うしている、元気かと銀座に誘い、豪遊したそうです。誘ったほうが奢られたという、その旭の 一晩に百万単位の金を使うことに、とてもかなわないとおもったそうです。だから、英樹本人が 旭を超えるとおもったことなど実際には考えられないのです。でも、日活アクションファンとし てはいつか、英樹が旭を超える日がくるんじゃないかとおもったものです。しかし、その日もこ ないまま日活映画は製作中止となりました。八月の濡れた砂を最後として。よかったのか、わる
かったのか、二人は年の離れたライバル、先輩、後輩として今も輝き存在するのです。いつまで も、小林旭に追いつき、追い越せとしてともに輝き続けるのです。小林旭を語るうえで、日活後 期の作品では高橋英樹の存在を無視できないという観点から書かせていただきました。

 

旭を盛り上げる男たち ・アキラ- 2005/06/08

 裕次郎が気持ち良く闊歩できるのも、旭が気持ち良くギターで歌って、歌い終わるとかかっていき、みごとにのされるのも、これみな、日活アクションを支える男たちがいればこそ、である。錠さんのカッコ良さがひきたつのも、無名の野郎のおかげ。彼らがいなきゃ旭のアクションで、錠さんといえどもカスんじゃいますよ。藤村有弘、山内明、金子信雄、内田良平、これみな「有名俳優」でして、例外。で、脇役NO.1は、深江章喜。「望郷の海」や「放浪のうた」で光る彼の「悪役」がいなけりゃ、旭も光りません。私は、旭の映画で、今度はどんな役だろうと、楽しみで観に行きましたもん。あまりぱっとした役でないと、がっかりしたもんです。高品 格さんといい、深江さんといい、小心で悪になりきれない設定が大好きでした。あまりにリアルに極悪人を置くと、映画がえげつなくなってしまう。日活のプロヂューサーたちはそれを十分わかっていて、日活活劇が下品に堕落しなかった秘訣であろう、裕次郎や旭がギラつくラブシーンをやらなかったことと、根っこは同じですね。さて、そういう善良な悪役では、近藤 宏、天坊 準、柳瀬志郎、等素晴らしいキャラで、旭とからむ郷えい治は大好きでした。要するにこれら個性的な名脇役が、日活アクションに厚みを与えているといいたかったのです。おっともう一人、私は妙にひねくれた役が多かった木浦佑三がいつも気になってました。
白木マリなど女優陣は、また。以上、愛すべき日活「殴られ」男たちに、乾杯!です。

 

脇役としての平田兄弟   ・マカオの竜- 2005/06/09

 脇役のことについての投稿がありましたので私も一言。関東無宿のダイヤモンドの冬、流れ者の群れのマドロスのアオちゃんこと青田刑事等々の平田大三郎のことが印象に深い。数多くの、青春ものからアクションものまでこなした彼のことは日活を語るうえで忘れてはいけない存在とおもっています。七人の刑事 終着駅の女の木島役は笹森礼子のふさ子と上野駅で待ち合わせ故郷に帰ろうとします。しかし、果たせぬまま死んでしまいます。七人の刑事のリアルさからは当然の結末かもわかりませんが二人を助けてやりたいとおもったものでした。この作品は長いこと一部の地方での公開のみで、オクラ入りされていたものでNECOでの放送でやっと日の目を見ました。そして、その実弟の平田重四郎、記録では出演の作品は多くはありません。しかし、非行少年 陽の出の叫びでは強烈な印象を残してくれました。日活不良少年映画の典型的作品で、監督は藤田繁矢(藤田敏八に改名前)でした。河辺和夫監督の非行少年に衝撃を受け、続くこの作品に青春のもろさ、陰鬱な60年代のやがてくる高度成長経済には乗れない少年の影を見たものでした。そういうわけで平田兄弟の日活での存在に注目してほしいと願うものです。

 

脇役が映画を引締める  アキラ- 2005/06/09

 あるTV番組で高橋英樹が喋ってました。監督「おい英樹、お前もそこから飛び降りてみろよ」英樹「できませんよ」監督「小林旭は軽〜くやってしまうぞ。」番組で英樹がみんなに曰く「旭さんは特別な人ですよ〜。」ここに、結局旭を超えることはできない英樹の本音がよく表れてますね。
そんな高橋英樹も、旭以外では唯一6作以上の自分のシリーズ作品を残しています。ご存知「男の紋章」です。(全10作といわれますが、旭の「渡り鳥故郷へ帰る」と一緒で「新男の紋章・若親分誕生」はやはり別作です。)英樹は現代アクションより「時代劇」の殺陣が好きだ、と公言する通り、水を得た魚の如く英樹はこのシリーズで「大島竜次」をいきいきと演じています。第1作「男の紋章」から最終作「龍虎無情」まで、実に多くの優れた脇役陣がこの「若親分」を支え、作品に重厚感を与えていると思うのです。母の轟夕起子、若を支える近藤宏、小池朝雄、中2作は谷村昌彦、桂小金治、弘松三郎などを「レギュラー」とし、要の敵役に名古屋章、藤岡重慶、中谷一郎、上田吉二郎、金子信雄、佐野浅夫、山内明、富田仲次郎、小林重四郎と、凄いラインナップです。最終作では宍戸 錠との対決を演出しました。英樹の凛々しさ、殺陣の上手さがこのシリーズ永続の基本ではありますが、何といってもこの脇役陣の厚みが作品を盛り上げ、英樹のヒーローぶりを浮彫りにしているのですね。私は小池朝雄と桂小金治の呼吸の巧さに惹かれて、このシリーズを全て観ました。そして、東映任侠ものと決定的に違う「スマートな味付け」という日活らしさが好きでした。旭も終期のやくざものではかなりどぎつい演出を引受けてますが、英樹の「紋章シリーズ」は日活明朗路線の最終段階だったのでしょうね。(渡哲也の「人斬り五郎シリーズ」は、もう私は観に行きませんでした。)どんな配役陣でもスターとしてスクリーンに輝いていた小林旭と比べたとき、脇役によって「すくわれていた」英樹だったと、改めて思います。英樹がTVで、それも時代劇でその後頭角を現したとき、これは正解や、と私は感じたのです。旭と同じ路線を歩む限り、旭の後塵に甘んじなければならない、誰よりも英樹自身が一番それをよく分かっていたと思うのです。それにつけても、日活はステキな脇役を擁してましたね。そうそう、私は「意気に感ず」のマヌケな社長の息子役の平田大ちゃんが好きです。

 

狼の王子  ・マカオの竜- 2005/06/10

 アキラさん、と初めて呼びかけさせていただきます。私の投稿に応えていただくように高橋英樹と平田大三郎についての文章をありがとうございます。そこで、アキラさんをはじめとしてどなたか、高橋英樹の「狼の王子」についての感想をぜひお聞かせ願えませんか。先に私のおもいを書くべきであるとはおもいますが、予断を与えてはいけませんのでみていない方のために概略を書くだけにさせてください。石原慎太郎の原作で舛田利雄監督作品、63年の製作公開の黒白作品です。戦争孤児の主人公を育ててくれた育ての親、やくざ組織の親分石山健二郎(男の紋章についてのアキラさんの文に父親役の石山健二郎の名がありません。第一作だけでしたからさほど重要と感じられなかったのか、たまたま、失念されたのか気になっています。この狼の王子のとき、また父親役でしたので余計に忘れられなくなっています)の復讐のため、公判中の犯人を法廷内で射殺します。新聞社勤務の愛人浅丘ルリ子がその速報を聞いて、ビルの窓際に立つ姿を外から俯瞰でとらえ映画は終わります。日活不良少年映画の流れをくむが、より孤独で反社会的な生き様に強く心惹かれたとだけ書いておきます。その後、教科書等に自分の名前の変わりに狼の王子と記すことが大人の今になっても続いています。マカオの竜でなければ狼の王子を名乗っていたと思います。おもいをついつい、書いてしまっているようです。どうぞ、お待ちしております。
 管理人さんから平田兄弟のことの質問をいただきました。概略だけキネ旬日本映画俳優事典からの引用で答えさせてください。
 平田未喜三 二人の実父。千葉県鋸南町で1907年生まれ。日本映画俳優学校二期性。同期に八木保太郎。中退後漁業に従事。戦災孤児を引き取り148人も育てる。この間のことを八木保太郎が脚本化し「第二の人生」として東宝にて映画化。このとき未喜三を演じた山村聡に誘われ蟹工船に出演。以後異色俳優として日活作品を中心に出演する。泥だらけの純情、帝銀事件 死刑囚など。戦後、54年に鋸南町町長当選後12年間在任。町長時代に小川宏ショーに出演、4年間レギュラーを努める。母方の従弟が水島道太郎。大三郎は三男。高校卒業後、八木保太郎や水島道太郎の家に寄宿しながら八木の俳優学校に通学。61年ノサップの銃に出演、専属契約を結ぶ。68年俳優を廃業。重四朗(郎は誤り)は四男。63年に民芸俳優教室から劇団民芸に入る。63年俺の背中に陽が当るが初出演。陽の出の叫びで主演。赤いグラス、黒部の太陽等に民芸在籍のまま出演。71年民芸退団とともに俳優を廃業。
 (詳細は俳優事典 男優編を見てください。旧版の495ページです)
事典をお持ちでない方にも、また、掲示板をお読みになっている方にもこれだけである程度わかるよう煩雑さを厭わず転記しました。ご了承ください。皆様の二人の思い出お待ちしております。
 最後に、平田未喜三のことを思い出しているうちに狼の王子のことも戦災孤児の連想から気が付いたものです。

 

ポスターの表記での疑問   ・マカオの竜- 2005/06/10

 平田兄弟に関して、追加で疑問をお聞きください。父親のことです。
 泥だらけの純情のポスターでは、平田未喜二となっています。華麗なる日活映画の世界のサイトでは、1963年の泥だらけの純情の紹介は平田未喜三となっています。ワイズ出版の「日活1954-1971」でも平田未喜三のようです。この間の事情をご存知の方がおられましたら、ぜひご教示ください。
 日活最後の封切りとなったのが(八月の濡れた砂の後に閉館までのつなぎに公開された)お蔵入りしていた和泉雅子の「朝霧」で、同時に公開されたのが、ワイズ出版の「日活1954-1971」では「七人の刑事 終着駅の女」となっています。これをもとに平田大三郎の最後の作品(製作年度は無視)としてとりあげたものです。ついでに一言。この作品ではあの、山下毅雄のテーマ曲が使われていません。松竹でも七人の刑事の劇場版が製作公開されていましたので、権利の関係で使えなかったものと推測していますが、これもこの間の事情をご存知の方がおられましたら、ぜひご教示ください。
 私の通っていた劇場では「朝霧」と「非行少年」の再映でした。何かのご参考までに記しておきます。
 ポスター集等お持ちの方はぜひ確認お願いします。

 

ダイヤモンド・トリオで・・・  ジャンバール- 2005/06/14

 >マカオの竜さん
平田大三郎はアキラ映画で良く記憶にあります。兄弟役者ということは存知あげませんでした。いいアクションスターとして売り出されるかと思いましたが、ちょっと線が細かったように思われました。兄弟では宍戸・郷、あと脇で杉山俊夫・元が記憶にあります。山内賢も別会社で兄弟でしたね。兄貴が出てるから俺も・・というような時代だったんですね。
日活のスター売り出しの成功はダイヤモンドラインの後は・・高橋英樹・渡哲也だけで藤竜也・沖雅也・杉良太郎と主演級としては売れずじまいで終わりました。斜陽という時代の波が押し寄せてきて映画スターを以前の感覚では作れなくなってきたんですね。大衆の求める物も変わってきました。
私の地元では当時、日活は直営館だったのですがアキラの映画は結構封切り時に見ましたが、裕次郎・アキラ・トニーの3本立て興行を2ヶ月に一度くらい1週間くらいやりまして、それが豪華で楽しみで良く見てた覚えがあります。一度に3人を見れて、それぞれの歌が聴けて・・ダイヤモンドトリオで最高の時間を過ごしました。後にも先にも日活スターはこの3人しか印象にありませんでしたから、見に行く日が嬉しくてワクワクしたものです。

 

日活映画とは  ・マカオの竜- 2005/06/15

 狼の王子を初めとする日活不良少年映画の系統につながる作品にはかなり、思い入れがあります。ただし、評論家や後世の人たちが分類するものではなく、自分がそうだとジャンル決めするものが日活不良少年映画なのです。簡単にいうと公開と同時代に共感をおぼえたもの、ほぼ同齢か、3、4才上ぐらいの年齢の、少なくとも成人前の主人公で描かれるもの、ということです。そして、無職か定時制高校生、少年院帰りならもう、完璧にこの日活不良少年映画の範疇です。だから、「いつでも夢を」は主人公の浜田光夫や吉永小百合が定時制高校生ですからこのジヤンルに、歌謡映画といわれる「この虹の消える時にも」は西郷輝彦が少年院帰りですから日活不良少年映画なのです。しかして、同じ歌謡映画の「北国の街」は舟木一夫の主人公が昼間高校生ですから青春映画なのです。

 もう少し説明しないとわかりにくいと思います。これは自分が定時制高校生であったことが大きく左右しています。別にいわゆる不良ではなく、時代に傷つき青春と格闘するといった設定に共感するということです。この分類を長々と書かせてもらったのはこれから色々作品について書くことがあったとき、日活映画は青春とともにあった、今、振返れば日活映画が青春そのものだったとのおもいを書くことになろうかと思うからです。誤解のないようにいうと、青春映画も大好きでした。
  「北国の街」を例にあげたのは、原作が富島健夫の「雪の記憶」、東映で映画化された「故郷は緑なりき」(水木譲、佐久間良子主演)のリメイクであり、心うたれた作品だからです。そして、「児井英生」プロデューサーをはじめとする日活アクション映画、社会性をもった「大塚和」プロデューサーの作品群、どれもこれも宝物です。作品が一映画会社の所有物であるのは確かなんでしょうがそれは、決して商売のためだけでなく自己の業績拡大のためだけに利用するのではなく、日活映画はこんな小さな一定時制高校に通う少年とともにあったいうことを忘れないでほしいと思います。
 
  ジャンバールさん応答有難うございます。そうですか、平田兄弟のことご存知ではありませんでしたか。私には「非行少年 陽の出の叫び」が思い出深い作品でしたから、主演の平田重四朗のことはその作品を通して知りました。
  また、今回、管理人さんから質問をいただくまで、平田未喜三のことは正直忘れていました。「泥だらけの純情」がこれまた好きな作品ですので、浜田光夫の親分役を演じているのは誰だろうとの疑問から知ったしだいです。このことから、平田大三郎との関係も知ったという訳です。
  今回あらためて泥だらけの純情のポスターを眺めているうち気がついたのが先の投稿です。同時代には気が付いていませんでした。そんなわけでかなりの日活映画好きと形を変えていっているようで少々照れくさいです。50円玉一枚を握り締め日活旧作五本立てをみにいっていた小学生でした。このころみた「女を忘れろ」等の作品の想い出いっぱいあります。土曜日の昼から、帰りはいつも最終までひとり日活映画の歌を歌いながら夜道を歩いたころはもう何十年も前の出来事になってしまいました。
 一度に書くと長くなります。また、時間の許す限り投稿します。もしおひとりでも、これからの「マカオの竜」名の投稿を、不良少年映画、青春映画、アクション映画、社会派映画なんでも待っているという方がお られましたらどうぞ、その旨書いてください。励みにしていきます。今後ともどうぞよろしくお願いします。

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