1961年の日活正月映画のラインナップは、ダイヤモンドラインがズラリ。
しかし、この年は日活にとって運命的な年となった・・・・
1月に裕次郎のスキー事故、2月には赤木圭一郎が帰らぬ人となった・・・

そんな時期の前年の雑誌の日活映画案内からお届けします。
(原文のまま)

 
 


裕ちゃんが, アキラが, そしてトニイが……
お正月の日活の銀幕を彩るあの映画, この話題

★61年の日活正月映画の陣容は、海外ロケ作品二本を含んだ話題作がズラリと並んでいます。
 さる十月十九日SASのDC8Cジェット機で出発、スペインを中心とした欧州ロケを現在敢行している石原裕次郎、北原三枝主演の「闘牛に賭ける男」, 来る十一月二十五日バンコックを中心とした東南アジア・ロケに出発する小林旭、宍戸錠、浅丘ルリ子主演の「波濤を越える渡り鳥」, 石原慎太郎が弟裕次郎のために書き下ろしたアクションとヒューマニズムの異色活劇「怒りの波止場」, (中略) 日活の正月興行は六週間で十二本の作品が公開されますが,まず,そのラインナップを紹介してみましょう。

★一週十二月二十八日〜一月二日 総天然色「闘牛に賭ける男」(監督舛田利雄, 石原裕次郎, 北原三枝, 二谷英明, エリサ・モンティス)と総天然色「俺の故郷は大西部(ウエスタン)」(監督西河克巳, 和田浩治, 清水まゆみ, 守屋浩, 平尾昌章, 井上ひろし, 田代みどり


★二週一月三日〜八日 総天然色「波濤を越える渡り鳥」(監督斉藤武市, 小林旭, 浅丘ルリ子, 宍戸錠, 白木マリ, 藤村有弘, 金子信雄)と源氏鶏太原作の「大出世物語」(監督阿部豊, 沢本忠雄, 稲垣美穂子, 宇野重吉, 轟夕起子)

★三週一月九日〜十四日 総天然色「俺の血が騒ぐ」(監督山崎徳次郎, 赤木圭一郎, 笹森礼子, 南田洋子, 葉山良二, 青山恭二)と喜劇「天使が俺を追いかける」(監督井田操, 三木のり平, 吉永小百合, 八波むと志, 小園蓉子, 千葉信雄, リー・スミス, 金子信雄, 西村晃)

★四週一月十五日〜二十日 総天然色「港のつむじ風」(監督松尾昭典, 石原裕次郎, 芦川いづみ, 二谷英明, 中原早苗, 長門裕之)と石坂洋次郎原作の珠玉篇「少女」(監督堀池清, 笹森礼子, 川地民夫)(※管理人注:既にお気づきかと思いますが『街から街へとつむじ風』が公開時のタイトルです)

★五週一月二十一日〜二十六日 今村昌平監督の話題作「豚と軍艦」(長門裕之, 南田洋子, 中原早苗, 吉村実子(新人),大坂志郎)と刑事物語シリーズ「ジャズは狂っちゃいねえ」(監督小杉勇, 益田喜頓,青山恭二,香月美奈子)

★六週一月二十七日〜二月一日 「狼の砦に挑め」(監督野口博志, 葉山良二, 小高雄二, 白木マリ, 中原早苗)とトップ屋取材帖シリーズ「顔のない美女」(監督井田操,水島道太郎, 葵真木子, 香月美奈子)

 ラインナップは以上の十二本です。これをご覧になればお分かりの通り, 正月映画の主軸スタアは, 石原裕次郎, 小林旭, 赤木圭一郎, 和田浩治のダイヤモンド・ラインを中心に, 男優陣では, 葉山良二, 長門裕之, 宍戸錠, 二谷英明, 青山恭二,川地民夫, 小高雄二, 女優陣では, 浅丘ルリ子, 芦川いづみ, 笹森礼子,中原早苗, 清水まゆみ,稲垣美穂子, 吉永小百合,北原三枝,南田洋子といった日活が誇る若さがピチピチと溢れた青春スタアで, 彼らが61年の映画界に向かって奔放むげに大暴れする布陣です。

待機する海外ロケ作品

 日活が61年のキャッチ・フレーズにしているのは世界的スケールで描く日活映画というものです。昨年, 「世界を賭ける恋」で, 遠くは「ビルマの竪琴」で海外ロケに実績を持つ日活では, 正月映画「闘牛に賭ける男」「波濤を越える渡り鳥」で61年のへき頭を飾る海外ロケものを発表するわけですが, 来年はまだまだ沢山の海外ロケ作品が待機しています。
 裕次郎のアラスカ・ロケ, 赤木圭一郎のキリマンジャロ・ロケ(アフリカ), 小林旭のアマゾン・ロケ(南米), 裕次郎のナイアガラ・ロケ(北米)と, ズラリと海外ロケものが並んでいて, 日活版西部劇も, いよいよ世界的スケールの規模を持つようになったわけです。(中略)

スケールの大きい「闘牛に賭ける男」

 ところで, 正月第一週, 期待の裕次郎の欧州ロケ作品「闘牛に賭ける男」は, 現在, スペインはマドリッド, マリオルカ島のパルマ, 地中海など, 南欧の明るい景観をバックに, 度胸一つで世界をまたぐ裕次郎の快男児ぶりと逞しい闘魂を撮影(十一月十二日帰国予定)中で, 「世界を賭ける恋」が武者小路実篤原作の「愛と死」で, 日本人の静的人物像を北欧をバックに描いたものと, 全く対象的で興味深い作品です。
 さる新聞社の事業部員時代, スペインの闘牛の日本招へいに失敗した裕次郎が, 北原三枝との激しい恋もうち捨てて、スペインの興行師ガリエゴを求めて, 単身, 異郷にのりこみ, 闘牛の日本招へいを成功させるまでの波瀾万丈の物語です。
 マドリッドの国立闘牛場に, 「オーレ」と叫び闘牛士(マタドール)の美技に熱狂する観衆, 凄絶な死闘をくりひろげる血と砂の闘牛を凝視する裕次郎の執念。ジプシーの穴居部落をさまよう裕次郎の憂愁。バレンシアからマリオルカ島へ, 地中海の陽光がふりそそぐ中を胃潰瘍の病と闘いながら執拗にガリエゴを追う裕次郎の熱情。
 舛田利雄監督は, 「闘牛の場面がクライマックスになりますが, スペイン・ロケのためにそこを選んだわけではなく, 主人公の死を賭かけた気持ちを, この闘牛がいちばんよく表しているからです。エキストラを何百人と使ったり, ライトを用いたりの大掛かりな外国ロケになりますが, 美しい風景を活かした本格的な撮影にしたいとはり切っています。石原君の持つ逞しさや大きさを, この作品で描き出し,正月映画スケールの大きなものにしたいと思っています」とスペインロケの狙いについて語っています。
 この作品の俳優についても, 石原裕次郎, 北原三枝, 二谷英明, 芦田伸介, 安倍徹, 三津田健という豪華な適役陣の他に, スペインの名花と謳われている人気女優のエリサ・モンテスが現地より特別出演し, スペインの演技派アルフオンソ・ロハスも起用されているといいますから, 日本・スペインのスタア共演という点も正月第一週の話題をさらうことになりましょう。

早射ちと歌の「俺の故郷は大西部」

 正月一週この「闘牛に賭ける男」と併映されるのが, 不敵の新人和田浩治の「俺の故郷は大西部」です。一連のお馴染み早射ち小僧シリーズや愚連隊シリーズで, スカッとした若さの持ち味をみせている和田浩治が, この作品では, OK牧場の決闘でもお馴染みの西部一の早射ちワイアット・アープの血を流れ流れて受け継いだ末孫の少年を演じるといった奇想天外な痛快アクションもの。
 日本に残した父の恋人を訪ねることになったこの少年が, 事前事業のために持参した寄付金十万ドルを持って日本に乗り込むわけですが, この情報がいちはやく関係者や報道陣に知れ渡り,羽田空港は彼を待ちかまえた人たちで蜂の巣をつついた大騒ぎ。しかし, これを嫌った少年が, たまたま機内で助けた密航少年を身代わりにして, 東京の街に無事にのりこむわけですが, 当然十万ドルを狙うギャング団も現れて, 裏街道にもとんだ旋風を巻き起こす。このギャング団とやがて対決したこの少年は親から受け継いだ得意の早射ちで, 彼らを退治し, 無事父の恋人とも再会し,
十万ドルも誠実な孤児院に寄付することになって, 日本を再び後にするという物語。(中略)
 

東南アジアでアキラの大活躍

 正月二週が, アキラの海外ロケ作品, お馴染み渡り鳥シリーズの決定版ともいうべき「波濤を越える渡り鳥」。戦火に遭い, タイで死んだ母の墓のあるドンガリの丘に日頃から訪ねてみたいと願っていた滝伸次が, たまたま助けたタイ人の招待でバンコツクに渡った。ところが, 彼を待っていたのは伸次の父の友人ロチャ家のゴルコン鉱山の権利書を狙うラオス人のギャング団だった。名刹と廃寺をひかえた観光都市アユタカの寺院廃墟の地下道で, 彼らと相対峙した伸次が得意の流し射ちでこれを根絶するというアクションもの。一方, このギャング団の中に, ラオスの虎と呼ばれる素性の知れぬ精悍な若者がいた。伸次と同じ母の形見のサンゴのネックレスを彼が持っていたことから, 乱闘の途中に兄の政治と分かるが, 間一髪, 一味の銃口に狙われた伸次を救った早射ちの虎は, そのままサーヤと名のる踊り子とともにメナム河に馬を乗り入れ, 去って行った。
 このラオスの虎にご存知宍戸錠が扮するわけですが, その他, 浅丘ルリ子が, 東南アジア民族舞踊研究のかたがたアンコールワット遺跡調査を続ける考古学者の父とタイに来ている芸大の娘に扮し, 伸次とともに怪事件にまきこまれながら, けなげに伸次の手助けをする。俳優は,この他, 金子信雄, 白木マリ, 藤村有弘など出演し,赤道直下の原野や都市をバックに, 雄大かつ迫力に満ちたアクションを展開します。
 斉藤武市監督は, このバンコック・ロケについて, 「渡り鳥シリーズの決定版としたい。東南アジアの未知の世界を舞台に, 思い切った仕事ができるのは法外の悦びです。メナムの河畔や, アユタカの町, ゴルコン鉱山などは活劇に最適の場所でしょう。次回のアマゾン・ロケとはまた違ったアジア的な雄大さがあります」と抱負のほどを語っています。大いに期待が持てるアキラの渡り鳥ものです。

赤木、快心のマドロスもの

 第三週は, 第三の男赤木圭一郎の海の男ぶりを描いた男性的な活劇もの「俺の血が騒ぐ」父の血をうけて, そろって海にあこがれる兄弟のたくましい海の男ぶりと兄弟愛を描くもの。必死の度れょくが実を結び, 期末試験を好成績合格した明は, 待望の遠洋航海に出発した。練習船海洋丸が, 真っ赤に燃える夕空一杯に白帆を張って滑るように大海原を航行していた時 , 突然, 見張りがが前方に一隻の船を発見した。しかし, その貨物船は薄暮の海上にポツンと停止したままだった。それが, 明の兄邦夫がのっていた謎の密輸船玄海丸の死の船影だとは,明はつゆも気づかなかった。
 かつて,ニューヨークで酔った挙げく,得意のパンチをふるった邦夫は船員証を剥奪されたが,弟明の学資を稼がねばならず,この玄海丸にのりこんだ。ところが,密輸航海の果てに,中国の警備艦に発見され,発砲されてかろうじて逃げ延びた時は,食い物もなくなった。そこへ通りかかったのが明の海洋丸だったのだ。邦夫は必死でこの海洋丸をダホしようとする玄海丸の悪徳船長に抗議したが聞き入れられず,ついに敵味方入り乱れての大乱闘が起こったのだ・・・。
 赤木圭一郎は「霧笛が俺を呼んでいる」についで二本目のマドロスものですが,今回の作品は, 腕と度胸のいい鉄火の海の男に扮して港町狭しと大暴れしたり,弟明のために命を賭ける激情の兄に扮して,男の心意気をみせるわけです。青山恭二,笹森礼子,長門裕之,南田洋子らの新旧ベテラン陣を加えて赤木圭一郎快心のマドロスものになりそうです。

(以下略) 

<管理人談>
 1961年の正月興行は,まさにダイヤモンドラインが大活躍した時期です。海外ロケの話題から想像すると,トニーが生きていたら,アフリカのキリマンジャロでの撮影が実現していたんでしょうね。どのような作品になったのでしょうか?
 アキラさんの南米ロケは後の『赤道を駈ける男』になったのでしょうか? そうなると,7年後に実現したということでしょうか。アキラさんの100本目の記念作品です。 しかし,斉藤監督の話の脈絡からすると,渡り鳥シリーズでの南米ロケを感じさせますね。
渡り鳥だと,さしづめブラジルあたりで,日系二世がからんで,ダイヤモンド鉱山の利権を狙うギャング一味をやっつける話でしょうか? 宍戸錠さんが「リオのジョージ」とかで(笑)・・・実現していれば面白かったのに。

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