南国土佐を後にして  

 

 ★ダイスさばきに注 目!

 ★渡り鳥・流れ者の原型
 
 
★アキラの二役

 

かつては“ダイスの目”とまで呼ばれ、暗黒萄の賭博を左右していた男・原田譲司。
しかし、彼は服役中に刑務所内で聞いた「南国土佐を後にして」の曲を契機に、
今では故郷の高知で地道に暮らそうと決意していた。
だが、世間の風は前科者に冷たく、なかなか定職に就くことはできない。
しかも恋人の春江は、死んだ父親が残した借金に縛られ、土地のヤクザ北村に結婚
を強いられていた。
度重なる北村一味の嫌からせ。春江と一緒のところを北村に押さえられナイフを突き
つけられた譲司は、危機一髪のところをかつての賭博仲間だった会津に助けられる。
そして彼に誘われるままに高知に見切りをつけ、再び東京に向った
譲司は、職探しに奔走する。そんなある日、北村の元から逃げた春江が譲司を訪ねて
きた。後を追ってきた北村は、最後の切り札である100万円の借用証を譲司に突きつ
ける。「明日の晩まで待ってくれ」
意を決した譲司は、春江を自由の身にするために自らの禁を破り、会津の元へ。
ダイス勝負の場へと臨むのであった。

<解 説>
ペギー葉山のヒット曲に想を得た川内康範の原作を川内・斎藤武市が脚色し、斎藤が
監督した歌謡アクション。“渡り鳥”、“流れ者”両シリーズの母胎ともなった記念
碑的作品である。
ある時は服役中の主人公を更生させるきっかけとなり、ある時はダイスを振ろうとす
る主人公の心理をかき乱してしまうテーマ曲。民謡「よさこい節」を原曲にしたこの
「南国土佐を後にして」の旋律は、物語の構成、進行の上で実に見事な役割りを果た
している。
主人公の原田譲司には、目にも鮮やかなタイスさばきを披見する小林旭。
特に二本柳寛と西村晃が見守る中、ダイスを一振りですくって5個のダイスを柱状に
重ねるシーンは圧巻/この見る者の目を釘づけにしてやまない超美技はワン・ショッ
トで撮影。斎藤監督は小林旭にフィルム、一巻き2,000フイート全部を与えるとの約
束で、できるまで何回でもやるように命じたとか。その意気に答えて旭は、なんとわ
ずか2回でこの難シーンをクリアーしたというエピソードが残っている。

(引用:ビデオ・にっかつ名作名画館「南国土佐を後にして」より)