昭和35年の11月下旬頃。当時、売れっ子だった3人が日活撮影所の一角で、あれこれ話した座談会『都会の空の用心棒』のセット撮影中であり『波濤を越える渡り鳥』のロケ出発前の小林旭さん(マイトガイ)。『拳銃無頼帖 明日なき男』のセット撮影中と思われる赤木圭一郎さん(トニイ)。『俺の故郷は大西部』の公開をひかえた和田浩治さん(ヒデ坊)。
 この3人が実際に語ったかどうかは別にして(…という設定? 雑誌収載のママ掲載)、当時の日活アクション映画全盛の頃の空気感は楽しめます。 
「近代映画 1月増刊号 日活青春スタア写真全集」(S36.1.15発行)より

■PART1(全5ページ)

ぼくたちは留守番! トニイとヒデ坊

  • 赤木 明日行くんだね。
  • 和田 いいよな
  • 小林 たいしたことないよ
  • 和田 海外ロケってな、初めてなんだね。
  • 小林 そうなんだよ。
  • 赤木 ほんとに波濤を越えちゃうんだな。
  • 小林 でも、海外ロケっていっても、われわれが住んでいるアジア圏内だものな…。
  • 和田 いろいろとみてくる?
  • 赤木 なかなかそうはいかないよ、忙しくて…。
  • 小林 期間が短いものね。でもよ。共演する女優さんがきれいなんだ。
  • 和田 鼻の下のばしちゃいけねえよ。
  • 赤木 ひっかけてもいいけどさ。小林旭さんですか? ターン。(ピストルをうつ真似)
  • 小林 そうはいかねえよ。渡り鳥じゃねえか。滝伸次さん特有の早業でかわしちゃうさ。
  • 和田 われわれは、強いからね。
  • 赤木 ピストルでも、ガンでも持って来いってんだ。
  • 小林 なにしろ張り切っちゃうよ、その女優さんはんね、エリザベス・テーラーにそっくりの凄い美人なんだ。
  • 赤木 そいつぁいいや…。
  • 和田 会ったら、なんていう。
  • 小林 (しなをつくって)はじめまして、よろしく。
  • 赤木 (真似て)すべてよろしく。
  • 和田 すべて?
  • 赤木 そうさ、すべて…。

★右上へつづく ↗


波濤を越える渡り鳥東南アジアでのロケ作品

  • 小林 仕事なんてそっちのけでさ、監督さんにどやされちゃって"お前なんて帰れぇー!”なんて云われんじゃねえか。しかし、なにしろ忙しくてあそぶひまなんてないよ。
  • 赤木 でもさ、適当に見ては来るんだろう?
  • 和田 初めてなんだからさ、方々見てこなきゃ…。
  • 小林 結局、仕事をするところが見たということになっちゃうね。(赤木さんに)あんたもどっかに行くんだろ?
  • 赤木 俺は、北海道。
  • 和田 なんで行くの。ロケ?
  • 赤木 「俺の血が騒ぐ」ってんだ。
  • 小林 明日はいなくなっちゃうんだね。
  • 赤木 そうなんだ。今度は船なんだ。
  • 和田 北海道まで?
  • 赤木 芝浦の桟橋から、ポポー。
  • 小林 船は出る出る煙は残るってやつだよ。
  • 和田 じゃ、どこにも行かねえのは俺だけじゃねえか。
  • 小林 そんなにくさんなよ。
  • 和田 小林さんは東南アジア、赤木さんは北海道、俺はひとりで撮影所で暴れてるよ。
  • 小林 おみやげ買ってきてあげるからね。
  •    おとなしく待ってるんだよ。ヒデ坊(笑)

俺の血が騒ぐ船上ロケ、北海道ロケ作品/赤木圭一郎