切り抜き新聞評
 
「渡り鳥・流れ者」シリーズが大人気だった頃の新聞時評です。
決して好意的な見方ばかりではないですが、当時の一つの見方として興味深
いものがあります。


小林旭的映画

 

 

 

 

 

 

 

 

小林旭主演の「流れ者」シリーズの一遍。小林は例のようにギターを抱えて
気持ょさそうに演じている。このシリーズの“楽しさ”というものを強いて
求めるとすれば、背景のロケ地の興味といえよう。
前作の「海を渡る波止場の風」は、鹿児島だったが、こんどは四国の宇和島。
 劇の内容は、いつもの型どおり。新興派の悪どい“乗っ取り”謀略に苦し
められる旧派の事業家の窮地を救う。宇和島名物の“闘牛”の味つけが特色
だが、人物の主軸は真珠養殖業者の娘(浅丘ルリ子)が、正義のスーパーマ
ン(小林)へほのかな恋情をよせるといった味つけ。それにピストルのうま
い“渡り者”(宍戸錠)がからんで、お互いのピンチを助け合う。
 “借り”が出来たの、返したのと無邪気なヒロイズム気分に自己陶酔して
いるところはまったくツミがない。
 宍戸の行動は欲得づくだが小林は正義感からだ。見ていておもしろいのは、
小林よりはむしろ宍戸の人間像だ。ずいぶんバタくさいいやみたっぷりなし
ぐさの数々だが、人間の欲望の正直さをさらけ出しているからだ。
映画は全くこの人物の愛きょうのある存在でもっているといっても過言では
ない。しかし、宍戸のあり方もいささかハナにつき出したから、警戒を要す
る。宇和島の町の祭りの日、そのにぎわいの中を事件を片づけて小林は、
ルリ子の感傷を残して連絡船でそっと去っていく。その船には宍戸もいつの
間にか乗り込んでいた。原作原健三郎、脚本山崎厳、監督山崎徳次郎。
(報知新開・近藤茂雄)


 小林旭主演の“渡り鳥シリ−ズ”の第四作目である。一宿一飯の恩義に報
いるため腕と度胸を貸す「またたびもの」とすれちがいの「メロドラマ」に、
アメリカ風の「西部劇」をまぜあわせ、それに歌謡曲も入るというのがこの
シリーズの特徴。そして道具立てもこの映画のように土建屋ふうなボスが子
分と殺し屋をつかって弱い者をいじめるが、いざという時、スーパーマンの
渡り鳥がぬっとあらわれて腕をふるう。また親分にはキャバレーのマダムの
情婦がおり、やがて仲間割れで自滅する一方、渡り鳥もすきな女と別れてゆ
くという類型の蒸し返し。そして、港町や盛り場というのがよく舞台になる
が、こんどは、 会津磐梯山のふもとの牧場とキャバレーである。
 牧場にわき出る温泉用元湯の利権がほしいたため町のボス(大枚志郎)ら
は子分をつかってかよわい女牧場主(浅丘ルリ子)牧童をせめたてる。
 美しい磐梯山の山中、山ろくをうまくいかしており、また今度のボスは案
外、根がおとなしく仕立ててある。子供(島津雅彦)のためにあくどいこと
をして金をためてきた男だが、最後には子分のだまし討にあってしまう。
そして渡り鳥がその孤児をつれて山を下るあたり「赤城の子守唄」そっくり
だ。
 大人の観客にはバカバカしい話ながら結構楽しく見られょうが、青少年に
はそうもゆかないだろう。馬などに乗ってブラブラ旅をしている渡り鳥は、
旅先のキャバレーでバクチ をやったり、用心棒の金で暮らしており、やる
ことはなぐりあいと、せいぜいボスへのかけ会いぐらいだ。それが“英堆”
に仕立てられているところはやはりヤタザ礼賛で、こういう製作態度は考
えものである。監督・斎藤武市。(報知新開・磯)


軽いが面白い。ツボを心得ている。斉藤武市監督・小林旭主演の「ギターを
持った渡り鳥」の時もツボをつかんでいると感心したことがあったが、今度
の喜劇もとくに前半はうまい。
小林が父親とやっている銀座のレストランにワンマンの自動車が飛び込んで、
弁償しないで帰ってしまう。ワンマンは小川虎之助、吉田茂をまねていい味
を出している。近藤宏らのヤクザがオトシマエをつけてやろうと大磯に乗り
込んだ時の応対も一語々々笑わせるし、それで近藤がワンマンのヤリの先を
小林旭に助けてもらい、足をあらって料理店でやとってもらうまでの話がい
い。近藤宏もいままでは一番うまい。小林をめぐるフロ屋の娘浅丘もスピー
ディーなセリフでいままでと違ったタイプ。
 後半のヤマは浅丘と結婚をねらう男(相原)実はその父が西銀座にトルコ
(※管理人注−風俗浴場店)をたてようとする政界ボスというので、ワンマ
ン乗り出しの場であるが、ヤンヤと笑わせるのは、その前、 バーづとめの娘
と関係した金持ちの坊ちゃん(相原)をこらしめようと小林がその坊ちゃん
についていったら、アパートで女房のほか子供が六人。かわいそうになって
こらしめるのをやめるが、実はそれはトリックだったというところ。後半か
らラストにかけてやや空気がしぼんだが日活の多い娯楽もののなかで成功し
た唯一の作品で、脚本・演出のうまさではないだろうか。
(日刊スポーツ・透)

 

 
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