匿名記者★座談会   明日のチャンピオンは君だ  

 

●初めにお読み下さい●

 昭和35年の秋頃、小林旭さんの人気がうなぎ登りに高揚している頃の雑誌記者の匿名座談会です。小林旭さんのことがらを中心に当時の日活の話をしています。
 内容については他愛のない、大した内容ではありません。しかし、当時の熱気のようなものを感じていだければと思います。言葉の中には当時を知る人でないと理解できないものもありますが、あえて註はいれません。
 “渡り鳥とその時代”のページと併せてご覧下さい。時代のニュアンスが把握しやすくなります。

 


アクション日活に第二のブーム来る!

B 十月末の日曜日に、小林旭のファンの会が開かれたけど、とてもだったそうだね。
  賛助出演の歌手も多く、主にコロムビア歌手だけど、ファンも喜んだそうだね。

C あれだけ応援出演を集めたのは、彼の人気かな?

A テレビ放送の録画をとるのでテレビ放送会社から交渉したんだよ、勿論ギャラ払って・・・。
  なるべく豪華な番組にしようというので・・・。

B でも、ファンは喜んだね。

A ところが、ファンというのは現金なものだね。旭が出ない時はざワザワして、ちっとも喜ばなか
  ったね。

B そうか、お目当ては旭なんだからな。

A 彼のサービス精神は見上げたものだ。レパートリーの中からお客に受けた歌をズラリと歌ってね。

B スケジュールもきつかったんだろう。

A 前の日に、二月作品の「太平洋のかつぎ屋」の宮崎ロケから帰って来たばかりだそうだ。

B 二月作品? ずいぶん早いな。

A 海外ロケがあるんで順序が逆になってるんだ。十一月作品の「大暴れ風来坊」の次に二月作品の
  「太平 洋のかつぎ屋」の宮崎ロケだけをすませ、続いて十二月作品の「都会の空の用心棒」を撮
  り、年末に、 正月ものの海外ロケに行く、というスケジュール。驚くなかれ四本も主演ものが併
  行してるんだ。

C そんなに早くてはシナリオも間に合わない(笑)本人は一人で、シナリオを書く人は何人もいる
  から間に合わないはずはないさ。

B 江守常務に云わせると、すごいブームだね。 

A 江守さんのカンは相当なものだからね。裕次郎の「嵐を呼ぶ男」の試写を見た時に、「これでブ
  ームを 作れる!」とヒザを叩いて喜んだというからね。あの熱狂的なブームを、彼は予言したん
  だから・・・。

C この前の「大草原の渡り鳥」の社長試写を見た時にも、堀社長と手を取り合って泣いて喜んだそ
  うだよ。「面白い写真ができた、これで日活は安泰だ、客は沢山入る!」って云ってね。

B オーバーだな。

A ああいう作品を作っていれば、しばらくは食いぱっぐれはないな(笑)

押し通すか日活流ヒロイズム

B 本人はどうなんだい、あの程度の写真で・・・。

A 彼のえらいところはそこなんだよ、役目に忠実だっていう所ね。
  「俺が人並み以上の給料を貰って、仕事ができ、オマンマが食えるのも、ああいう作品をとって
  いるからなんだ」と云って、一生懸命なんだ。ゆっくり考えれば文句も出ようが・・・。

C 文句を考えるヒマもない(笑)

A 熱が入っているよ、仕事に・・・いいかげんくたびれちゃって「どうにでもなれ!」っていう気
  を起こしちゃいそうに思うんだが・・・。

B それの心配はないさ、子供じゃないんだから、何千万円かかけて撮っている中心に居るのがオレ
  なんだ、という責任感の自覚はあるさ。

C 作品の傾向を変えるという点は?

A まずここ一年は考えられないね。かえってこのヒロイズムをもっと徹底させようかと考えている
  位だ。かえってこのヒロイズムをもっと徹底させようかと考えている位だ。強くって、正義の人
  だ。

B 正義の味方スーパーマン。

A そうさ、小林旭イコール、スーパーマンさ。

C 「絶唱」なんか彼の代表作といえるが、ああいうものも当分ないわけか。

A 時間をかけてあんなものを作るなら、その時間で渡り鳥を二本作った方がいい、というものさ。

B 裕次郎よりは一般的にいいらしいね。人見知りしないで、ニコニコするだけでもね。

A 裕次郎のように爆発的に人気が上がらなかったから、本人の頭の中も整理されているからね。
  
C 裕次郎の場合は、本人が知らないうちに人気者になったっていう感じだからね。

身体には、充分気をつけて!

B 身体の方はどうかな?

C 元気があっていいね。裕次郎なんかやたらに使われていた時は青い顔して肩で息してるって
  いう感じだったけれど、旭は昼休みにはオートバイを乗り回したり所内の友人と話をしている
  時でも元気いっぱいだよ。

A まだ使われ方が足りないのかな(笑)

C もっとも、夜更かしをしたりしないからね。撮影の夜間は別だけれど・・・。

B ひところ、よくナイトクラブやバーを歩き回っていたけれど・・・。

C あれも一種の熱病みたいなもんだよ。人間、金が入ると、必ずどこかで使ってみたくなるんだ
  よ、俳優は必ずナイトクラブへ出入りする。旭もそれなんだ。そして、何ヶ月か何年かすると、
  つまらなくなってやめてしまう。旭も丁度つまらなくなったんだ。そこへ持ってきて仕事が猛
  烈に忙しくなって来た、そこで「待てよ、いつまでも遊んでいていいのかな、身体も身の内だ」
  って考えたんだろうな。

A くわしいね(笑)

C まあ、そんな所だよ。

B もっとも、今どき銀座なんか歩けないよ、物見高いのにたかられちゃうから・・・。

C 医者にかかっているという話はどうなんだい?

A ロケに医者がつきっきりだという話があるね。

B ドル箱だから大切にするのさ(笑)

A 多少手荒く扱ってもガタの来る身体じゃないだろう(笑)

C 身体が資本なんだから大切にしないと・・・。

A 肉体労働者だから・・・(笑)

当分続く浅丘ルリ子とのコンビ

B コンビの問題なんだけれど、浅丘ルリ子のコンビは当分続くだろうね。

A 日活本社へのファンの投書もルリ子とのコンビが圧倒的だね。他のスタアは一寸考えられないん
  じゃないかな。

C 裕次郎は、北原三枝とコンビで長く続けたけれど、会社としてはあの線を狙うのかね。

A 日活、の方針なんだね。長く続けるというのは・・・。例えば、xならxという俳優をスタアに
  仕立て上げようとする、Yという女優をくっつけて、毎月一本ずつカラーの作品で勝負をして行
  く。こういう方法をとれば、マスコミがとりあげてくれ、必ずファンがワッとつく。日活はこの
  スタイルで何組かのカップルをスタアに仕上げた。同じ方針だよ。これは一種の信念だね。

B 「コレでもか、コレでもか!」っていうヤツ(笑)

A 小林、浅丘のコンビも徹底的に押し通す。そしてシリーズものにも、ロケ地を変え、内容を変え
  徹底的に押し通す。

C 赤木圭一郎には笹森礼子を、和田浩治には清水まゆみと守屋浩をつける、というわけだね。

B ここで問題になるのは裕次郎だね。仮に北原三枝が結婚後に引退するとなると一寸コンビニ困る
  から・・・。

C それでも、芦川いづみ、中原早苗と、居ることは居るね。芦川なんか「あじさいの歌」「あした
  晴れるか」なんか、見事なコンビぶりを見せていたしね。

B こうやってみると、一寸女優陣が弱い感じだね。

A もっとも、女優は男優次第で意外に育つものだからね。

B あまり深刻に考えなくても、日活みたいに男性中心の作品にはたいして必要じゃないからな。
  一寸かわいそうな云い方だが・・・(笑)

C 小林と浅丘のコンビの魅力というのは、小林の渡り鳥に対し、浅丘はいつもフラレのような型で
  彼女に哀愁があるという点かな。

A そうだね。何ともいえない一種独特のうれいを持っているからね、浅丘が・・・。

C あの眼がきいているね。

A 二人の眼の大きさも対照的だし・・・(笑)

レコードの人気も目を見張る有様!

B レコードが売れているね。

A エライコッチャ(笑)

C  コロムビアという会社は、美空ひばり、島倉千代子というドル箱がいる、それにコロムビア・ロ
  ーズ、神戸一朗なんかも・・・。それが、最近は小林旭、守屋浩などの新興勢力にすっかりお株
  をうばわれたっていう感じだね。

A 確かに歌はうまいね。

C うまいというより、元気があってよろしい!(笑)

A 一時低音ブームがさわがれた時にデビューしたんだけれど、彼は時の流れに逆らって、高音で勝
  負したね、あの度胸も立派なものだよ。

B 裕次郎がすごく受けた頃だね。フランク永井、松尾和子も低音だし・・・。

C いわゆる絶叫型で、女性の胸にキンキンとシゲキを与えたわけだ。

A 共鳴したかな(笑)

C コロムビアじゃあニコニコしてるよ、たいへんレコードが売れるんで・・・。

A レコードでもうけた分でピアノを買う、なんて云っていたんだけれど、いつの間にか買ったね。

C たっぷり貰ったんだろう(笑)

A 彼の歌は、誰にでも歌えるのが魅力だね。街のアンちゃんたちが、元気よく歌いながら歩いて
  いるもの。

B そうだ、歌謡曲の魅力っていうのは、大衆に愛されることなんだから・・・。

A 社会党みたいだな(笑)

C 池田内閣だ(笑)

B ミーハー族より一寸年代が上の二十代の人にも歌われるというのは、民謡や、戦争中に流行った
  歌をアレンジし直したものだから歌に覚えがあって歌いやすいということだし・・・。

A 歌詞なんかも面白いのがあるね。

B 著作権で引っ掛かって、発売禁止になったのもあるね。

A ロケから帰ってすぐとか、夜間のセットが終わってからとか、歌を吹き込むのも大変だね、忙し
  いから。もっとも担当のプロデューサーが、家へ楽譜を届けておくと、二、三日ヒマを見つけて
  ピアノをポロンポロン叩いて自己流でマスターし、歌い方の練習をしておくそうだね。歌のスタ
  イルは、誰にも教わらないで、自分の思った通りするそうだ。カンがいいから直されないそうだ
  よ。

小林旭の佐々木小次郎が夢

B 日活では四大スタアの顔合わせは絶対にやらないそうだね。

A 江守常務の言を借りれば「ダンピングは絶対にしない!」だってさ(笑)

C オール・スタアもの必ずしもダンピングではないが、東映のオール・スタアものを裕次郎一人で
  クッたから威勢がいいな。

B 裕次郎との共演なんか夢だな。

A 今の段階じゃ無理だろうが、我々としては考えたくなる話だな。

B 裕次郎が警官で、暗黒街に潜入する。小林旭が若い貸元で、いつの間にか二人の間に男の友情が
  生まれ、助け合いながら悪の大ボスをやっつける・・・。

A そううまく話が作れればいいけど・・・(笑)

C こちらで考えるほどうまくゆかないものなんだ。

A 江守さんがこの調子では絶対にやらせないね。

B 夢を見るだけならいいだろう(笑)裕次郎が宮本武蔵で、旭が佐々木小次郎(笑)

C 時代劇は「幕末太陽傳」だけだな。

B 裕次郎も出たね。

C ムシリなんかを自分の毛で作ってね。一寸おもしろかったね。

A ファンとしては、ああいうものをもういっぺん望んでいるんじゃないかな。

B 何千人かのファンが連名で日活江守常務あてに嘆願しないとダメ・・・(笑)    END

 
       
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