この対談は1961年当時、コンビを組んで大活躍のお二人が、やがてそれぞれの主演作が増えて、日活撮影所で久々に顔を合わせたところから始まります。昭和36年(1961)3月に公開された宍戸錠さん主演の『ろくでなし稼業』で、先に「トップ屋シリーズ」などで活躍されていた二谷さんとコンビを組んでの登場。稼業シリーズは『用心棒稼業』(4月公開)『助っ人稼業』(6月公開)が制作されたが、最後のは二谷さんの役が長門裕之さんに代わった。(『用心棒稼業』と『助っ人稼業』の合い間の時期)

昨日は東 今日は西

ジョー 
このところ、お互いに忙しくて、なかなか会えず残念至極。 

英 明 全く…。“ろくでなしコンビ”東と西に別れ別れの大活躍(笑)

ジョー (笑)しかし、稼業シリーズの“用心棒稼業”以来、ダンプどんは、“散弾銃(ショットガン)の男”オレは「三つの竜の刺青(ほりもの)」撮影とスタジオでもろくろく顔が合わない…

英 明 それで“ろくでなしコンビ”か…(笑)ところでジョーさん、もう日活は何年目になる?

ジョー 製作再開以来、すでに七年の歳月は過ぎたり…まことに、エースのジョー感慨無量…オレのことにくわしいダンプどんには、よくおわかりのことと思う。

英 明 わかり過ぎるくらい、わかる…。花も嵐も踏み越えて、ゆくが男のいや、エースの生きる道…。これまでのジョーさんの努力と精進、まことに見あげたもの…。ダンプの英明、ほとほと感服つかまつる。

ジョー イイエ… そんなにろくでなしをほめると、タイトルにいつわりありと訴えられる。

英 明 それじゃ、ほめるのは遠慮しよう。

ジョー しかしダンプどんも大分古い方だぜ。その貫禄は、日活で、相当メシを喰っていないと、なかなか出ないとみた…

英 明 サンキュー・ベリマッチ。オレが、初めてデビューした作品は「浮草の宿」だから、いまから丁度五年前の昭和三十一年。思えば感慨無量だぜ。

ジョー わかる…わかる。ダンプどんは、アキラと同期のニューフェィス。そのくらいの身元の調べは、エースのジョーちゃんとしてある。

英 明 それこそ、わが“ろくでなしコンビ”よ。ここで、オレも、ジョーさんの身元調べがすんでいることをファンの前で証言したい…

ジョー うへっ、なんの調べぞや。

英 明 ジョーさんのデビュー作品は、かの日活初期で爆発的な話題となった名作「警察日記」監督はたしか久松静児先生だった。

ジョー ご名答。

英 明 しかし、ここで、オレがいいたいのは、もっとシビレルこと。

ジョー 何だろう・・・ズバリ。一言でいってくれ。

英 明 それはジョーさんのガンマンとしての生きる道がすでに、デビュー作品できまっていたことだ。

ジョー どうして?

英 明 その「警察日記」でジョーさんは何の役をやった?

ジョー 警察官でござる。

英 明 ほら、お巡りさんは、拳銃を持つもの。デビュー作品で、ガンを持ったということはすでに、今日の早射ち無敵のジョーの存在が予告されたというわけだ。

ジョー なあるほど。ダンプどんはなかなかの予言者だ。

英 明 じゃあ、俳優稼業をやめて、易者になるか・・・なんて考えを持つから。

ジョー ダメな男よ。

英 明 同感でござる。

 

つめたかったぜ 二月の海は

ジョー ところで、「ろくでなし稼業」の撮影は、ほんとに、おもしろかった……オレには、思い出深い作品になるぜ。

英 明 いろいろと愉快なことがあった…… とにかくジョーさんの初の主役作品が大ヒットしたということでほんとにうれしかったぜ。あれは、アクション映画の傑作のひとつだよ。おっと、…
自分が出た作品をほめるなんて、ろくでなしだな…まったく。

ジョー オレは会社のためにあの映画がヒットするように祈ったよ。大黒柱の裕ちゃんは入院中だし、トニーが死んだ直後だけにな。何か、会社の沈んだ空気をパッと一掃したかったね。これは、自分の作品だからじゃなくて、やはり、会社のメシを七年も喰っていると、自然と人情が湧いてくるぜ。

英 明 ほんとに、その気持はわかる。何といっても、「ろくでなし稼業」はジョーさんにとっても、記念の作品だ。二人で、二月の海に飛び込んだときは、いま思うと悲壮だったぜ。

ジョー まったく。だが、ダンプどんがあんなに水泳がうまいとは思わなかった。あれだけの荒れている海を百メートルも泳ぐなんて、ちょっと普通の人間にはできないぜ。

英 明 実はオレは、終戦時の引き揚げで名高い舞鶴湾で、波を枕に……育った海の子よ。

ジョー ダンプ・ガイ、海に突っ走るだね。

英 明 海はジョーさん好きか?

ジョー オレは大好きだ。

英 明 オレもだ。“海っていうのはオフクロの匂いがするからな”。

ジョー どこかで聞いたセリフだぜ。待てよ…何んだ。「ろくでなし稼業」でオレがいったセリフじゃないか。

英 明 いい言葉だよ。

ジョー ダンプどん、オレが海を好きなのは、ごく自然な理由がある。

英 明 へえ? そりゃ何だい?

ジョー 実はオレは海で生まれたんだ。

英 明 なにっ? 海で生まれたって? それじゃ、鯨かイルカの親戚みたいで、ダンプのガイとしては、ちょっと納得が行きかねるぜ。

ジョー なあに、オヤジが貿易商で、台湾に行く途中、船の上で生まれたってことさ。

英 明 ははん、それで海の上かい?

ジョー まさしく、ゴメイトウだ。だからオレの血はなんとなく潮の香にあこがれているんだ。つまりなつかしがっているんだろうな。

英 明 ぐっと泣かせる文句だ。しかし、稼業シリーズの二本目「用心棒稼業」の熱海ロケも楽しかった。

ジョー あのときは、下田沖にオレとダンプどんが飛び込んだというので、洋子ちゃん(南田洋子)とネコさん(金子信雄)も、熱海の海に、ハリキッテ、飛び込んだ…洋子ちゃんもネコさんも、水泳の選手だったから、落ち着いたものだけど……それでも、二月の海は寒いぜ。

英 明 うん。稼業シリーズでは、誰かが海に飛び込むというジンクスができるかな。ところで「助っ人稼業」というのはどうだい。オレは出られなくて残念だけど、晃夫ちゃん(長門裕之)なら、まったく変わった味が出るから楽しみだね。

ジョー そのとおり……

英 明 稼業シリーズも、早や三本か。

ジョー どんどんと稼ぎましょう。題名が“稼ぐ業”と来ているんだから。

英 明 今度も海は関係あり?

ジョー 残念だけど、飛び込みはない。

英 明 これから暑くなるから、泳ぐシーンをつくってもらったら…

ジョー まったく。冬ばかり飛び込んで、肝心の季節にないとは情けない(笑)

英 明 ろくでなし大いにぼやくか(笑)

 

唄いまくろう ろくでなしコンビ

英 明 ところでジョーさん、オレもすっかり唄づいたぜ。

ジョー いい傾向だ…英明さんは、もとアナウンサーだけあって、ぼくよりはるかにいい声の持ち主だから、じゃんじゃん唄うべきよ。

英 明 嬉しがらせて、あとでけなすんじゃないか。

ジョー エースのジョー、オセジと坊主の髪は結ったことがねえ…

英 明 オレもそうだ……でも、ジョーさん、もう何曲ぐらい吹き込んだ?

ジョー もう十四・五曲はあるな。とにかくこの間、グラモフォンの人にきいて、びっくりしたんだから。

英 明 十曲以上もねぇ。そんなにいつ吹き込んだかな。

ジョー オレにもよくわからない…だれかが代わりに吹き込んでくれたのかなとレコードをみたら、みんなオレの名前が書いてある……

英 明 しかし、この前のジョーさんと吹き込んだ“ジョーさんのトコトンヤレナ節”はゴキゲンの唄だよ。

ジョー しかし、英明さんとオレの声が似ているなんて、全然考えてもみなかった……

英 明 ほんとに、マイクを通すとちょっとわからない。

ジョー やはり、ろくでなしコンビの声だ。

英 明 何から何までよく似るよ。

ジョー ダンプどんの最近吹き込んだのは?

英 明 「散弾銃の男」の主題歌“散弾銃の男”

ジョー なかなかイカス題名だ

英 明 しかし、唄っていうのはいいな…。追い込み撮影でくたくたになっていても、唄の吹き込みのときは疲れを忘れる。

ジョー オレは疲れはもちろん、歌の文句まで忘れる……(笑)

英 明 それでこそ、ろくでなし……だけど、ジョーさんの“旅笠道中”“名月赤城山”って聞けば聞くほどいい歌だ。ジョーさんが長脇差つけて、笠をもったところが目に浮かぶな。颯爽とした宍戸忠治。

ジョー 赤城の山も今宵限り……

 

大いによし 西部劇

英 明 ジョーさんの時代劇っていうのは、きっとナカせるぜ。

ジョー まあ、オレは西部劇で満足だ。オレより、ダンプどんの時代劇の方がイカスんじゃない。

英 明 オレも西部劇の方がいい。

ジョー 英明、西部劇ってぇのは……(笑) こういう風に、声まで一緒になっちゃうんだ……ダメな男さ。

英 明 では、西部劇のオーソリティ、ジョーさんからどうぞ。

ジョー オーソリティなんて、おだてるなかれ……ばかな男だから、その気になる……(笑)

英 明 いや、天下広しといえども、ジョーさんみたいに西部劇をみてる人は少ないよ……

ジョー 好きなんだよ。なにしろ西部劇を見に仙台くんだりから、わざわざ東京まで、出て来たからね。

英 明 それはいつ頃?

ジョー 中学時代だよ。仙台からちょっと離れた白石というところに疎開していたけど、終戦後、西部劇が見たくて、土曜の夜、夜行に乗って、朝、上野に着くと手当たり次第に西部劇ばかり。持参した弁当は、映画館の中で食べる。いま思い出すと全くなつかしい。

英 明 また感慨無量……。

ジョー 実際、“駅馬車”なんていうのは、何度見てもイカシている。

英 明 オレも四回見た。

ジョー えっ、オレも四回だ……ばかな男だぜ。

英 明 それから“ハイ・ヌーン”っていうのも最高だ。

ジョー ところがついに、ゲーリー・クーパーもグッド・バイしちゃった。

英 明 ジョーさんは、猛烈なクーパーファンだからな…

ジョー オレは、クーパーと一度は共演したかった……

英 明 “ベラクルス”なんかも、実によかった……

ジョー ほんとうにあんな味のあるガンマンはいないね。惜しい人だ。西部劇が好きになった理由は、クーパーさんのおかげだからね。あの人は映画のある魅力を最高、最大に表現してくれた……

英 明 “平原児”それにアカデミー賞をとった“真昼の決斗”“悪の花園”“ベラクルス”みんななつかしい……

ジョー クーパーさんには素朴な味がある。

英 明 庶民的な人なんだな。

ジョー だから、どんなスーパーマンや、英雄をやっても、生きているんだ。温かい血が通っている。

英 明 オレたちアクションスタアのいいお手本だ。

ジョー これからも誰がみても楽しめるシンの通ったいいアクション映画をつくりたい…

英 明 ほんとだ。アクション映画はいくらでもおもしろくなる……努力さえすればね。

ジョー ろくでなしの友よ。大いに頑張ろう。裕ちゃんも、そのうち、出てくる、日活アクション万々歳にしていこうや。

英 明 大いにやりましょう。


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