佐藤利明

 

 

 

 

 

 

 

 

「THE アキラ節」によせて

 1960年代、日本のスクリーンと音楽界を席巻した驚異的な出来事。洋楽のマンボのリズムと、ローカリズムあふれる民謡を脳天を突き抜けるようなハイトーンの歌声でまとめあげた小林旭の「アキラ節」。天下無敵の歌声で、並みいる敵も呆然唖然、唄い終わるまでは誰も手出しが出来ないという不文律が、日活無国籍アクションのなかで成立し、アキラ節は映画主題歌挿入歌として、全国津々浦々に轟き、高度成長に突入したニッポンのスタンダードとなった。

 その端緒となったのが1960年、『海から来た流れ者』の主題歌「ダンチョネ節」。ペレス・プラード楽団が流行させた「マンボ」のリズムと、民謡のミスマッチは、小林旭の驚異的な表現力を得て、ベストマッチとなった。「ズンドコ節」「アキラのツーレロ節」「アキラのホイホイ節」など、アキラ節路線が爆発。もともとは明治、大正時代の「書生節」をルーツとする俗謡の現代的再生としてのアキラ節は、ノヴェルティソングの歴史の一ページを飾ることとなった。 

 そして昭和36年、アキラ節が浸透するなかで登場したのが、植木等の「スーダラ節」だった。作曲・編曲は萩原哲晶。そのサウンドをテレビ「シャボン玉ホリデー」や東宝クレージー映画の音楽としてアレンジしていったのが宮川泰。「ウンジャラゲ」や「アッと驚く為五郎」などのクレージーソングも残した名匠が、アキラ節をアレンジしたのは93年の「アキラ・ザ・グレート」以来。宮川先生自身「自動車ショー歌」が気になって仕方なかったと発言しているが、それもそのはず1965年のオリジナル「自動車ショー歌」の演奏は宮間利之とニューハード。そう「スーダラ節」のオリジナルバンドが、クラウンのアキラ節の第一弾を演奏していたのである!

 1990年。日本を席巻したクレージーソングの復活ブームを覚えておられるだろうか?植木等の「スーダラ伝説」は、1960年代の植木節15曲をセレクトして、宮川泰がアレンジ。ノンストップ11分の至福のメドレーは、一大ムーブメントを作り上げることとなる。

 93年の「アキラ・ザ・グレート」で宮川がアレンジを手がけたのも、この「スーダラ伝説」のアキラ版を目指してのこと。当時は8曲のミニアルバム形式だったために、ノンストップのグルーヴ感を出すに至らなかったが、宮川アレンジとアキラ節の幸福な出会いは、60年代から30年を経た「節道」の成熟でもあった。
 

 そして2005年、小林旭芸能生活50周年を記念しての「コンプリートシングルズ」シリーズ、「マイトガイトラックス」三部作のリリース。そしてクレイジーキャッツ50周年記念「ハナ肇とクレイジーキャッツHONDARA盤」「同HARAHORO盤」、「クレイジームービーズ」二部作のリリースをさせていただいた。このCDに1960年代の「節道」のオリジナルが余すところなく収録されている。
 

 日本のノヴェルティソングの両雄の仕事を鳥瞰していただける状況を作ることができたのは、50周年というアニバーサリーイヤーだったからに他ならない。
 温故知新。機は熟し、その「節道」50年への回答を出すべく、実践を試みたのが、66歳を迎えてもなおパワフルな小林旭による「アキラ節」のノンストップメドレー「THEアキラ節〜マイトガイ・ヒット・パレード〜」である。小林旭ならではのゴージャス感を出すために、贅沢にフルバンドによるオーケストラ演奏。そして随所に仕掛けと企みを盛り込んだ、宮川泰先生の遊び心あふれるサウンドは、自身のノヴェルティソング人生の集大成的な感もある。
 

 問答無用! 空前絶後! 感無量! 昭和という時代をパワフルに駆け抜け、時代を作り上げたヒーローだからこそなし得た壮挙! 常に現役であり続ける小林旭だからこそなし得た、ノヴェルティソング史上のエポックメーキング。それが「THEアキラ節〜マイトガイ・ヒット・パレード〜」なのである。原点にして革新的! 一聴、驚愕の12分54秒の「アキラ節ワールド」へようこそ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

収録曲紹介!


THEアキラ節 〜マイトガイ・ヒット・パレード〜
       7月21日発売  日本クラウン=マイトガイレーベル
 
             作詩・作曲:V・A /編曲総指揮:宮川泰
            編曲:溝渕新一郎/構成:佐藤利明

(イントロ)自動車ショー歌 作詩:星野哲郎 作曲:叶弦大

ズンドコ節       作詩:西沢爽 補作曲:遠藤実 
              1960年日活『海を渡る波止場の風』挿入歌

南国土佐を後にして   作詩・作曲:武政英策
              1959年日活『南国土佐を後にして』主題歌

ダンチョネ節      作詩:西沢爽 補作曲:遠藤実
               1960年日活『海から来た流れ者』主題歌

アキラのツーレロ節   作詩:西沢爽 補作曲:遠藤実
               1960年日活『南海の狼火』挿入歌

ダイナマイトが百五十屯 作詩:関沢新一 作曲:船村徹
               1959年日活『二連銃の鉄』挿入歌

ウインチェスター73  作詩:良池まもる 作曲:米山正夫
               1965年日本クラウン

恋の山手線       作詩:小島貞二 作曲:浜口庫之助
              1964年ニッポン放送「痴楽綴方教室」より

さすらい        作詩:西沢爽 採譜:植内要 補作曲:狛林正一
              1962年日活『遥かなる国の歌』挿入歌

鹿児島おはら節     作詩:西沢爽 補作曲:遠藤実
              1960年日活『海を渡る波止場の風』主題歌

ノーチヨサン節     作詩:西沢爽 作曲:狛林正一
              1960年日活『東京の暴れん坊』主題歌

ショーがないね節    作詩:高田ひろお 作曲:首藤正毅 
              1975年日本クラウン

ごめんね        作詩・作曲:遠藤実             
              1971年日本クラウン

恋の世界旅行      作詩:杉たくみ 作曲:叶弦大
              1968年日本クラウン

ゴルフショー歌     作詩:星野哲郎 作曲:叶弦大
              1975年日本クラウン

赤いトラクター     作詩:能勢英男 作曲:米山正夫
              1979年「ヤンマー」CM

自動車ショー歌     作詩:星野哲郎 作曲:叶弦大
             1965年『投げたダイスが明日を呼ぶ』挿入歌

蛍の光音頭       作詩:稲垣千頴  作曲:スコットランド民謡

(間奏)熱き心に    作曲:大瀧詠一

自動車ショー歌     作詩:星野哲郎 作曲:叶弦大 
             1965年『投げたダイスが明日を呼ぶ』挿入歌

 



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