
『大暴れ風来坊』撮影風景 白黒部分が監督、後ろ姿の女性は浅丘ルリ子さん
★“流れ者”名コンビ山崎監督のプロフィール★
山崎徳次郎監督は、田坂具隆(たさかともたか)監督についていた監督で『JA750機行方
不明』で初監督。以来、“事件記者シリーズ”で名を売り、さらにアキラとのコンビ“流れ者
シリーズ”が大好評で、これからも大いに名コンビぶりを発揮するだろうと期待されています。
山崎監督は黒メガネをかけた活動的なタイプ。たいへんに恰幅がよくて、一見、若秩父(※当
時の人気力士)を思わせるような童顔です。その童顔にふさわしい温厚な紳士。話し方も大人
しく、感じの良い人柄で、撮影所内での評判もいいそうです。
★歌の魅力を大いに盛り込む★
流れ者シリーズの抱負について・・・
「これは渡り鳥シリーズと共にアキラ君のアクション、歌を存分に生かしてゆきたいと思って
います。アキラ君でなければ、流れ者シリーズの成功は見なかったでしょうね」
『大暴れ風来坊』での歌の挿入について・・・
す「アキラ君の歌の魅力は、いわば高音の魅力でしょう。高音というのはむずかしいと思うん
ですよ。あんまり高い声を出すと、あとがつづかなくなってしまう・・・。しかし、アキラ君
の場合はそうではありません。途切れるかと思うと、決して途切れないで、声をふりしぼって
歌うんですね」
★アクションと風景の魅力を★
「“流れ者シリーズ”や“渡り鳥シリーズ”の魅力は、アキラ君のアクションが呼び物である
ことは、いまさらいうまでもないことです。それに加えて、風光の美しさが一層、画面を彩っ
ていることも見過ごすわけには参りません。
“流れ者”では前作(※『南海の狼火』)で宇和島の風光を存分に撮り、好評でした。
そして、片や“渡り鳥”では、北海道の大平原をバックにしていたことが思い出されます。
人物の動きが、平凡な、見慣れた風光ばかりをバックにしていたのではアキがきます。
人々は旅行に憧れるものです。だからこそ、海の流行歌とか、港や別れの歌が流行するのです。
映画の場合でも、それと変わりありません。時代劇でも“旅鴉もの”が受けますが、つまりは、
流行歌と同じわけなのです。
人間は未知なもの、珍しいものに対して、本能的に興味を抱くものですが・・・。
“渡り鳥”や“流れ者シリーズ”はこの本能を見事にとらえたものということができるでしょ
う。
・・・松山のよい所は存分にとりいれました」
「・・・まず、トップシーンが大ロングの俯瞰で、瀬戸内海の島々が撮られ、その間を連絡船
が進むわけです。そして、その船の中に、アキラ君以下の主なスタアを動員するわけです」
船の上でまず出て来るのがアキラ君扮する野村浩次。坊主の殺し屋十字架の政に扮する宍戸錠
さん、それから太田黒役の藤村有弘さんといった人たち。
やがて、船が港に着き、ルリ子ちゃん、北沢彪さん、南風洋子さん、高品格さんなどが次々と
登場するわけです。
★アキラに託すファンの夢★
アキラ君とルリ子ちゃんのラブシーンについて・・・
「アキラ君は腕っ節はあくまでも強いが、今度の役の設定は刑事です。しかし、これはラスト
シーンまで伏せてありますが・・・。それまでは流れ者なんです」
太田黒に協力を求められたときルリ子ちゃんの扮する瀬川玲子もそれとなく耳を澄ますのでし
た。流れ者の浩次に、いつか心惹かれていたのです。
しかし、浩次は、「ごらんのような流れ者でしてね、別にこれといったアテはありませんが…」
というのです。「持って生まれた放浪癖が身に沁みついて、この方がずっと気楽ですよ…」
このようなセリフがファンの共感を呼ぶのでしょう。
みんな、何かに縛られて生きているのです。
放浪に憧れていても、人間は容易にそれを実行することができません。金銭的な制約ばかりで
はありません。仕事とか、家庭とか、その他さまざまな事情にしばられて住んでいる場所から
離れられないというのが実状です。
旅行も、たまには出来るでしょう。出張することもあるでしょう。しかし、天下の風来坊であ
ることはむずかしいことです。ギターを片手に、昨日は東、今日は西・・・という歌の文句そ
のまま放浪の旅を続ける野村浩次に人々は充たされぬ己の夢を託しているわけなのです。
★流れ者シリーズで一緒に成長しよう★
悪人たちのさまざまな策謀にもかかわらず、「正しい者は必ず勝つ。オレはいつもそう信じて
戦っているんだ。お嬢さん、頑張るんだよ」といって玲子を励ます浩次なのでした。
その浩次の正体を、お嬢さんの玲子は知らない。
やがて苦境に陥った玲子の父は、浩次たちの力で無事、仕事を続けることができる。
「なにもかもまるで夢みたい・・・そうやっていらっしゃる野村さん別人のようだわ」
玲子は興居島の美景を眺めながら浩次にこう言うのです。
「ぼくのこの松山を見る目は玲子さんと同じだな。おそらく一生胸に灼きついていますよ」
「あなたが刑事さんだったなんて! 疑ったりした私、許していただけます?」
「身分を隠しておつきあいしたぼくの方がどんなに辛かったか!謝るのは、ぼくかも知れない」
淡い慕情をさらりと捨てて、浩次は去ってゆくのです。
・・・アキラ君の魅力を、今後どのように発揮させるか・・・。それが問題ですね。
と山崎監督は言うのでした。
・・・いままで、アキラ君の魅力はさまざまに言われてきました。その一つ一つが、それぞれ
本当のことです。何しろガンバリストであること、マイト・ガイ・アキラの名は、まさにその
ものズバリでしょう。
「仕事に対して、ものすごい情熱を持っていること。例えば吹き替えを使った方がいい、と思
われる危険な場面を撮るときでもアキラ君は、決して吹き替えにやらせない。やはり、それだ
け、自分の仕事に対して、愛情と責任を持っているんですね」
・・・今後、アキラ君が進むべき道について
「大いに演技力をつけることだと思いますね。それから、演技のハバを今より一層ひろげるこ
と。そして、今後とも益々、流れ者シリーズを良い作品たらしめたい私自身もこのシリーズに
よって勉強してゆきたいと思うし、アキラ君もこのシリーズによって、大いに成長して欲しい。
という点ですね」
温厚な山崎監督は、熱意を込めてこのように語るのでした。
(資料:「別冊近代映画・大暴れ風来坊特集」より)
特集・1 俺たち名コンビ対談・アキラさん&ジョウさん