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<はじめに>
私が初めて『やくざ渡り鳥 悪党稼業』を見たのは、何度目かのアキラさんのブームがあった頃だった(「昔の名前で出ています」が大ヒットした頃)。「帰ってきたマイトガイ!小林旭・闘魂シリーズ」と題して、9本の映画が一定期間上映された。その内の最終日の作品がこれだった。今思うと、そのラインナップは凄まじい。この前の週には『海を渡る波止場の風』が上映されていた。偶然にもスクリーンの中のアキラさんの姿と同じような白のスーツを着ていた私は映画が終わると塚越尚子(浅丘ルリ子)に別れを告げた、野村浩次の気分で席を立ったことを思い出す。そう、野村浩次や滝伸次は知っていても、鬼頭善吉のことは何も知らずに次の週に劇場に出かけて、スクリーンを見るや、思い切りカウンターパンチを食らった気分だった。
『やくざ渡り鳥 悪党稼業』と『あらくれ』は主人公の名前が同じであり、ドジな相棒が松吉(谷村昌彦)であることからシリーズ化が予定されていたものと思われます。渡辺武信氏著「日活アクションの華麗な世界」でのとりあげ方は、後者に対してページが大きく割かれている。それは、タイトル通りの日活アクション全体を俯瞰してとらえた場合です。当サイトは、タイトル通りに「渡り鳥」「流れ者」の視点で両作品を捉えたいと思います。前述の「日活アクション・・・」の解説には《流れ者たちの組織襲撃》の見出しがあり、その中の2作品として採り上げられています。
そして文中に『やくざ渡り鳥 悪党稼業』ついて「副題に“渡り鳥”という表現があっても、かつての“渡り鳥”シリーズとは大違いで、この映画の旭は、暴力団同士の争いに割りこんでうまく立ち回り、金をつかもうとする欲深な一匹狼である。」とあります。私は、こうした見方ではなく『やくざ渡り鳥 悪党稼業』は、“渡り鳥”的なものの一大パロディであると考えます。この後に大量に放出される凄まじいまでの集団抗争劇とは違って、まだのどかさが漂う作品です。この作品から“渡り鳥”的要素を採り上げると・・・
1.
渡り鳥をパロディ化したコスチューム
無国籍アクション(和製西部劇)の象徴でもある「テンガロンハット」を決して離さない。はっぴの祭り衣装に、テンガロンハットの上から手ぬぐいでほっかむり。
本来は(皮の)ブーツだが、そのパロディのゴム長靴(アクセントに折り返してある)
2. しつこくつきまとうライバルの登場
役の上でもライバルでありつづけた宍戸錠さんの登場。名前は、通称「政(政五郎)」(コルトの政、 ハートの政、情報屋の政などと多用された)
3. 土地の美女に慕われる
政の病身の妹(長谷川照子)に慕われるが、それ以上言っちゃいけないと、彼女の告白を途中で止める。
4. 地域のお祭り
温泉町の芸者衆の女御輿の登場(ストーリー上で重要なポイント)
『あらくれ』は、主人公のキャラクターのそうした部分のみが残されているだけで、コスチューム的な特徴はありません。そういう意味からも当サイトは「渡り鳥」的要素の濃い『やくざ渡り鳥 悪党稼業』を押します。本作が本格シリーズ化とならなかったのが残念です。『あらくれ』が『やくざ渡り鳥 あらくれ』となった方がピッタリの気がするのですが・・・・。
★やくざ渡り鳥 悪党稼業★ ストーリー概略
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◆キャスト◆
鬼頭善吉 … 小林旭 立原政五郎… 宍戸錠
立原信子 … 長谷川照子 香港ジョー… 渡哲也
菊 丸 … 松井康子 宇 野 … 高品格
結城みどり… 牧紀子 黒沼 … 木島一郎
か ね … 清川虹子 小泉 … 玉村俊太郎
松 吉 … 谷村昌彦 健 … 市村博
南条茂 … 郷エイ治 南条竜作 … 加原武門
由紀江 … 園佳也子 勝子 … 高樹蓉子
◆スタッフ◆
企画:友田二郎 脚本:山崎巌 監督:江崎実生
撮影:横山実 照明:大西美津男 美術:佐谷晃能
音楽:佐藤允彦 助監督:藤井克彦
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昭和三十二年。
パナマ製のテンガロンハットに米軍払い下げのトレンチコートにゴム長靴のスタイルで、 温泉町に現れた渡り鳥の鬼頭善吉。(明らかに「渡り鳥」のパロディスタイル)この町では、宇野組と南条組の2つのやくざ組織が対立している。宇野組が支配する女郎屋から足抜きさせようとしたチンピラの健(市村博)から、女郎を取り戻したことから組の客分となり、宇野組長(高品格)は敵対する南条組の御曹子である茂(郷エイ治)を殺すように頼まれ、金を受け取る。
そして、手下として松吉(谷村昌彦)がついてくる。鬼頭は、さっそく見初めた女郎の信子(長谷川照子)の部屋にあがるが、肺病を患っていると知り何もせずに店を出る。
鬼頭は南条組に行くが、南条組長(加原武門)にあっさりと御曹子殺しを頼まれたことをうち明け、さらに宇野組以上の報酬を要求して南条組に取り入ろうとする(「渡り鳥」でも敵の内情を探るために用心棒にやとわれたり)。そこへ3年ぶりに出所してきた政五郎と、ばったり顔を会わせる(漫才のボケとツッコミ)。政五郎は鬼頭の五年前の賭場荒らしに対して恨みを持ち探しているところだった。たちまち、決闘となる二人。政五郎はドスをかざして鬼頭に迫るが、鬼頭は鎖鎌ぬんちゃくで応戦する(ここでも「渡り鳥」のパロディ)。そこへ現れたのが香港ジョー(渡哲也)、彼は政五郎に弟分を殺されて恨んでいる。しかし、勝負の結果はお預けとなる。
政五郎は、南条組の組長に預けていた妹が駆け落ちしたと知らされる。本当は南条組の息子である茂(郷エイ治)に犯され妊娠させられたうえ、無理矢理に堕胎させられ女郎にさせられていたのだ。そんなことも知らない鬼頭と松吉は、宇野組組長の女房が経営する女郎屋にいる信子(実は政五郎の妹)と健が足ぬけさせようとした勝子の二人と引き換えに、南条組の縄張り内から10人余りの女郎を足抜けさせる(ホラ吹きのキャラクター)。
宇野組の賭場、香港ジョーが一人勝ちしているのを見かねて、松吉に代わって鬼頭が壺を振る。そこへ天井から政五郎と健が暴れ込んでくる。もみ合う四人。そんな中で鬼頭が健の耳元に丘の上の病院に行けとささやく(根っからの悪人ではない)。
信子が入院する病室。健と勝子を前に札束を気前よく渡す鬼頭。二人が礼を言って部屋を出ると、
信子は涙を流して鬼頭にこう言った、「人を好きになったの初めてよ。鬼頭さん」。 鬼頭は「それ以上、いうんじゃねぇ」と、やさしく信子の言葉をさえぎった(流れ者に女はいらない)。
勝子と町から逃げようとしていた健は南条組につかまり、政五郎や組員に責められる。
信子の口から政五郎の妹であること、南条組の茂に陥れられた事を聞いた鬼頭は、茂の恋人である結城みどり(牧紀子)を拉致してくるが、意外にもマゾヒストの変態女だと知る(このあたりは、コミックそのもの)。
南条組には久しぶりに東京から茂が戻ってきた。駅前一帯の土地を買収し、一大風俗浴場を作り、そこで働く女たちを相手に麻薬を売る計画をもっていた。鬼頭は麻薬取引の用心棒にと南条組に売り込んだ。しかし、
茂は宇野組長を自分の目の前で殺すことを条件とした。
かつての妾に妊娠したということで呼び出された(実は鬼頭の企み)宇野は、現れた鬼頭に刺されて川に沈む(実は鬼頭が刺すまねをしただけ)。
麻薬取引現場の倉庫の中。
金が入ったバッグと麻薬が交換される。その途端、大きな破裂音が・・・(松吉が仕掛けた爆竹)。破裂音と煙が立ちこめる中、どさくさに紛れて鬼頭が金と麻薬のバッグを奪う。しかし、その手口を知っている政五郎は鬼頭と一騎打ちの勝負を挑む。鬼頭のサイに対して、政五郎のドス。なかなか勝負がつかない様子を見て、茂は鬼頭をピストルで撃とうとする。そこへ現れたのがトラックに乗った宇野組の連中。
また新たな混乱の中で鬼頭が宇野組に捕らわれてしまう。
温泉街の祭りは、芸者衆の女御輿で華やかに盛り上がっている。
勝子から南条親子の裏切りの顛末を聞いて、鬼頭を助け出そうする政五郎と松吉は女御輿に紛れて南条組に 潜り込み鬼頭を助け出す。その途中に宇野に見つかり、宇野を刺し殺す。
「風邪をひかせたうえに、バラすたあ、あんまりだぁ」そう言いながら倒れる宇野。
勢いをかって、鬼頭と政五郎の二人は南条組に殴り込む。
鬼頭に結城みどりの性癖を聞かされて激怒する茂。金をやるからと命乞いをする南条。卑怯にも隠し持った銃で鬼頭を撃とうとした瞬間、背後から突然現れた香港ジョーに刺される。彼の弟分の千野組を潰した張本人が南条なのだ。
残った金と麻薬を奪い合う三人。鬼頭は金のためにカラダを張った。しかし、政五郎は妹が死ぬ間際に鬼頭の名前を呼びながら死んだことから、イイ男のままでいてほしい。香港ジョーも金が欲しい。かくして、三つどもえの闘いが始まるが、途中で金の入った金庫は通りかがったパトカーの前へ。あわてて身を隠す三人。そのうち、政五郎一人が鬼頭に「達者でな」の一言を残し、警察官の中へ飛び出した(やはり、錠さんのみが警察へ行くパターン)。あきれる返る香港ジョー。
やがて街道を歩く、鬼頭と松吉の二人の姿があった。
「ひと山越えれば隣町よ、足抜けしたい女郎がごまんといらぁ」とうそぶく鬼頭。鬼頭の後ろをひょこひょことついて行く松吉の姿も小さく消えて行く(続編を匂わせるエンディング)。
終
<管理者コメント>
日活アクション映画に詳しい小説家の小林信彦氏は「渡り鳥シリーズ」を“日活アクションコメディ”と位置づけた。子供の頃に映画館で体験したことのある私には、それに対して違和感を感じていた。しかし、
後にテレビやビデオで改めて見た時、アキラさんとジョーさんの掛け合いに、それを見た。 本作品は、全てがそれだといえる。全編がコメディトーンに終始される。この後に作られるニューアクションの先駆け的作品の一連を俯瞰的にとらえた場合、冒頭のような「集団抗争劇」と定義されるかも知れない。本作のみで捉えた場合は間違いなくコメディであり、「渡り鳥シリーズ」のパロディと考えます。
[本作のギャグ]
・鬼頭がゴム長靴を脱ぐと、靴下は大きな穴があいていて、自分で臭いをかぐ。
・川の水で顔を洗っていると、真っ赤な腰巻きが流れて来て、頭にかぶる。
・コートのポケットに大きな穴があいていて、なけなしの三百円を落とす。
・助けた芸者にすぐに言い寄り、芸者を抱くには金を持ってこいと言われる。
・ライバルの組の息子の殺しの依頼を受けている最中に、たばこを勧められ、
ケースごと自分のポケットにしまう(植木等さんのキャラクターがよくやっていた)
・思い切り派手な衣装(売り場のマネキンが着ていたスーツをそのまま)
※左の写真参照
・武器として、鎖がまヌンチャク、伸縮式のサイ。
・「無頼シリーズ」の黒ドスを使う香港ジョー
・黒づくめのダボシャツを着た錠さん
・その他 (色々あります=探してみてください)
『やくざ渡り鳥 悪党稼業』は江崎実生監督、『あらくれ』は長谷部安春監督。『あらくれ』の前半は前作のキャラクターを踏襲した雰囲気で推移するが途中からシリアスな暴力描写になって行く。これは、かつて「あいつシリーズ」の一連のイメージと異なった『爆弾男といわれるあいつ』
を作り、評価を得た長谷部監督ならではのスタイルかも知れない。また、アキラさんのヘアスタイルや衣装が違うのは他の撮影中作品との関係か。この時期のアキラさんは、助演・主演の繰り返しで、年間13本出演という全盛期に匹敵するくらいの忙しさです。前年(1968)の5本、翌年の7本に比較すると驚異ですね(MOVIE4参照)。この両作品の違いは、後者が長谷部監督であったことが大きいですね、同監督はスターシステムではなく、ディレクターシステムを重視する人ですから(結果的には、その事により評価されるわけですが)。
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★あらくれ★ ストーリー概略
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◆キャスト◆
鬼頭善吉 … 小林旭 貝塚鉄五郎… 葉山良二
美 樹 … 和泉雅子 芸者まり子… 町田祥子
結城太郎 … 藤竜也 庄田礼子 … 吉岡ゆり
松 吉 … 谷村昌彦 西 尾 … 河上喜史朗
庄 田 … 佐々木高丸 乃 川 … 長 弘
今 野 … 戸上城太郎 村 井 … 青木富夫
前田健次 … 杉江廣太郎 今野の用心棒…宍戸錠
ローザ・夏川…藤江リカ 今野の用心棒…深江章喜
村木ハナ … 清川虹子
◆スタッフ◆
企画:友田二郎 脚本:山崎巌 監督:長谷部安春
撮影:上田宗男 照明:三尾三郎 美術:千葉和彦
音楽:鏑木創 助監督:白井伸明
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日活マークの後、テーマ音楽のメロディのみが流れる中で、鬼頭善吉(小林旭)と松吉(谷村昌彦)のコンビが賭場荒らしをするシーンを背景に(ドスをかざして金を奪おうとするが、松吉が相手側につかまり、仕方なく頭を下げて謝る鬼頭。スキを見て松吉を連れてスタコラ逃げる)スタッフ・キャストが示され、最後に『あらくれ』のタイトルが現れる。
鬼頭は北陸の温泉町で、いい顔になったという弟分を頼って長距離列車に乗る(車内検札があり鬼頭は<東京−横浜間>の切符しか持たず、「着駅払い」で弟分が残金を払うととぼける)。駅長室で待つ鬼頭は誰も現れず、留置場に送られる。そこには迎えに来るはずの弟分の太郎(藤竜也)が同房にいた(ストリップ小屋の支配人をしていて、わいせつ物陳列罪で捕まった)。二人は、しっかり者の太郎の妹・美樹(和泉雅子)により釈放される。
鬼頭は美樹が勤める温泉旅館で金も持たずに芸者をあげる。一方、鬼頭とはぐれた松吉は偶然にも同じ町にいて、土地の新興暴力団・関西すみれ会の賭場で鬼頭の名前をかたり息巻いていた(赤いふんどし布には、丸の中に鬼と書いてある)。「やいやい、鬼善を知らねえか」と叫ぶ松吉に、すみれ会は知らねえと返す。そこへ現れたのが芸者まり子に誘われて来た鬼頭。すみれ会幹部との勝負でイカサマであることを見破り、事務所に誘われる。この町にある石切場を買収し、レジャーセンターを建てる計画があること、その石切場は昔からの博徒である庄田組が肩入れしていることを知らされる。その代貸である貝塚鉄五郎(葉山良二)の殺害を頼まれる。鬼頭は大金を受け取ると共に芸者も貰って行くと調子よく、まり子をくどいて、この町の対立状況を聞き出す(このあたりまではコメディタッチ)。
鬼頭が石切場に乗り込むと、意外にもそこには太郎がいて妨害をした(鬼頭がすみれ会に肩入れしたことを知り、相手方の庄田組に潜り込んでうまく立ち回ろうとする策略)。しかし、太郎はすぐにやめさせられる。
石切場の借金返済のために賭場を開帳する庄田組。その賭場荒らしを頼まれた鬼頭は太郎に話を持ちかける。賭場荒らしのために留守になっているすみれ会の事務所の金庫破りを太郎に任せ、鬼頭は賭場荒らしのふりをするだけで後に合流する計画だった。しかし、太郎は、芸者まり子に見つかり金を奪われる。まり子は、すみれ会に見つかり取り返される。
片や庄田組の賭場荒らしに乗り込んだ鬼頭は金を奪おうとするが箱の中は空。肝心の金は、松吉が奪っていた。後に鬼頭は鉄五郎に金を返し(「首吊りの足を引っ張るようなマネはしたくねぇよ」と鬼頭のセリフ)、二人の男の友情が生まれる。
太郎の行方を美樹にたずねる鬼頭の前に現れたのは、関東嶋岡組の村木はな。美樹の力になると約束する。すみれ会に拉致された太郎は、妹を犯すと脅され、しぶしぶ庄田組壊滅に手を貸すことを約束する。
すみれ会の手先となって、石切場に現れる太郎。鉄五郎は賭場のあがりで借金を返済するが、すみれ会の策略により新たな借金が増えていた(庄田組の養女・礼子は、鉄五郎の許嫁でありながら、すみれ会幹部とできていて、勝手に証文を作っていた)。一方、鬼頭は美樹に事情を話すために旅館に伴ったことを誤解した太郎は、鬼頭にドスを抜いた。
村木はなが、美樹に事情を聞き見かねて、関西すみれ会と庄田組の手打ちを仕切るが、すみれ会の悪辣な計画により殺害される(殺し屋として宍戸錠さんが初めて登場するが、一切セリフがなく、シリアスさを強調)。これを見た太郎は、すみれ会が一同に会するクラブへと単身乗り込むが、なぶり殺しにあう(とどめを刺す錠さん、以後出ない)。
庄田組に別れのあいさつをする鬼頭の元に、太郎の死体が届けられる。庄田組に届けられた、すみれ会からの果たし状を胸に殴り込もうとする鬼頭に、鉄五郎が呼び止め共に従う(主題歌が流れる中を修羅場に向かう二人の姿−東映の健さんと池部良さんのような技巧的な画面ではなく、ドスを肩にかついだ軽さがおかしい)。
石切場に着いた二人に、いきなり銃弾の嵐。鬼頭はダイナマイトを投げて応戦。斬りまくる鬼頭、刺されながらも応戦する鉄五郎。やがて、会長と殺し屋(深江章喜)のみとなり、鬼頭と鉄五郎の二人に挟まれ斬り倒される(このあたりは、渡辺氏の「日活アクション華麗な世界・下」より以下に引用)。
鉄五郎の代わりに代紋を背負って警察へと向かう鬼頭に追いすがる松吉。鬼頭がいつも身につけていた根付けを握りしめ、じっと見つめる美樹の姿。
祭囃子が響く町の中を一人消えて行く鬼頭の姿があった。 終
<ラストのクライマックスの引用>
追いつめられた戸上(すみれ会会長)と深江を間にはさみ、その両側に旭と葉山がかなり遠く、おそらく百メートルぐらい離れて立つ。その位置関係を遠く引いたカメラで正確に提示した後、画面は低く地に這った望遠ショットとなり、呼吸をととのえ、息をためておいてから、敵に向かって短距離ランナーのように走り出す旭を正面からとらえる。次いで同じように敵に向かって走り出す葉山を含めた全景を俯瞰で見た後、真横からのロングショットで、旭と葉山が敵二人に左右から走り寄り、おのおの一人ずつを刺して、勢い余って走り抜ける姿を見せる。敵役たちは、ゆっくりと崩れ落ちるように白い沼地に倒れ、旭と葉山は、傷ついた互いの身体を支え合いつつ去っていく(去ることはない)。このシーンの興趣は、ヒーローの殺しの情念を、広大な空間の中で走りぬける距離として視覚化して見せることにあった。長谷部演出のアイディアも良かったが、走る小林旭の姿も実に良かった。この疾走感の中には、たしかに、アクションの世界で鍛えぬいた体技の冴えがあり、恐らく高倉健では、こうは走れないだろうというような、旭らしさがあった。
<管理者コメント>
体技といえば、この翌年(1970)に作られた作品として『鮮血の記録』がありますが、その一シーンで入り口のドアから、約3〜4m離れたデスクに座る郷エイ治さんの胸元に、ひとっ飛びで蹴りを入れるシーンがあります。これがワンカットで撮られているという驚き。是非、機会があれば確認してください(ビデオは、出ています)。
※参考資料及び引用=「日活アクションの華麗な世界・下」渡辺武信著・未来社刊
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