北帰行より 渡り鳥北へ帰る  




 

 

 


     

 

 

ギターと遺骨を抱えた渡り鳥の滝伸次は、
冷たく汽笛が流れる函舘の港に降りたった。
伸次にとってこんどの旅はあてもなく流れるきまゝな旅ではなかった。
胸に抱いた親友同田浩−の遺骨の故郷がこの北の港町だった。
伸次と浩−は東京のナイトクラブに働くモダン・ジャズのメンバーだったが、
浩−の麻薬中毒がいつも伸次の心を苦しませていた。
伸次の長い説得で浩一は病院に入ることになったが、
その夜、何者かに浩−は射殺されてしまった‥‥・・。
そして、いま浩一の故郷にやって来たのだった。

函館の町は灰色の夕暮れだった。
すぐさま伸次は浩−の実家である岡田造船所を訪ねた。
浩一の実父治五郎が頑固一徹で「勝手に家を飛びだした息子なんか関係はねえ」
と、伸次にまで不満をぷちまけたのも、
造船所がまったく経営不振のためであった。
しかし妹の由美だけは、伸次にやさしく話しかけるのだった。
「兄は幸江さんという方と結婚してるんです」
伸次は由美と別れて現在、幸江が勤めているという、
キャバレー“ロキシー”にフラリと入った。
幸江を指名した伸次の様子をキャッチしたボスの黒川は、
伸次をたゞの流れ者とは思わなかった。
伸次が本当に探しあてたい男は、浩一を殺った男だ。
右手にサポーターをはめた謎の男、政‥…・。
浩−が息を引き取る瞬間、
「畜生! 漢栄晶の乾分の政だ!」とつぶやいた。
伸次は函舘の裏町を探しあるいたがダメだった。

次の日、伸次が岡田の家を訪ねると、治五郎が黒川一味に責めたてられて
「五百万の期限は昨日だ! どうしてくれる」中に割って入った伸次は、
黒川に「十日間待ってくれ」と頼みこみ冶五郎を助けた。

伸次は函舘に着いた日、自動車事故でケガをした良太を見舞ってやろうと
佐伯医院を訪れた。伸次にとって驚いたことに良大の母は幸江だった。
そして看病する由美に会ったことから、ますます浩一の仇をとる決意を新たに、
政を探すと誓った。
そのころ、黒川のところに漢栄昌の使いだという“ハジキの政”が流れついた。
「ここが例の岡田造船所だ……こいつをつぶして倉庫を建てる……海岸ぶちだし
船から直接に取り引きできる訳だ……」と岡田乗っ取りを企てていた。

日魯漁業につとめる由実は、会社の金八十万円を銀行帰りに
黒川一味に強奪された。
人相が判らないばかりか、会社は由美と治五郎が仕組んだ芝居で、
造船所の資金に回したと疑った。
これを知った伸次は由美を連れ、“ロキシー”に乗りこみ、犯人のシゲを
殴り倒し八十万の金を奪い返した。
しかし伸次にとってまた困ったことに、幸江が紫斑癌という病気で入院、
五万円の手術代が入用となった。
その日から伸次は夜の酒場を流し、ギターで稼ぎ始めた。
しかし病状は急変し、良太の叫びもむなしく幸江は死んでしまった。

翌朝、函館飛行場に北日本航空のバイカウント機が着睦した。
漢栄昌と秘書が一人、黒川との麻薬取り引きに来たのだった。
そのころ、ハジキの政は取り引き前に伸次を消そうと山頂の崖っぷちに
伸次と対峙していた。
「サポーターをはめろ!」という伸次の声に
「オレはハジキの政じゃない」と政がいったとたん、
シゲたちの銃弾が二人の足元に炸製、もつれた伸次と政は谷底へ転落して行った。

実は漢栄晶の秘書が本物のハジキの政であることを知った黒川の仕業だった。
取り引は無事に済み、漢栄昌は黒川たちに送られてキャバレー“ロキシー”の
フロアに出ると、中二階の踊り場に人影がよぎった……。
「誰だ!」 黒川の声にさっと飛び出したのは伸次だった。
「俺はそう簡単には殺られないぜ。お前たちを倒すまではな…
漢栄昌! 黒川! 今日こそ、岡田や幸江さんの仇をとってやるぜ′」
しかし一瞬、背後にまわった黒川の乾分の山岸が伸次に拳銃をつきつけた。
同時に本物のハジキの政が引金を引いた。
一瞬、政のハジキがふっとんだ。
入口近くにヌッと立った男、ニセのハジキの政、実は、麻熊取締官立野……。

フロアの中央に飛び出した伸次と立野の拳銃が火を吐いた……。
乱戦のスキを見た黒川と漢栄昌は、キャバレーを飛び出すと飛行場に向った。
滑走路でさ漢たちに追いついた伸次は、漢を殴り倒した。
「貴様たちかばらまいたヤクのために、どれれだけの人間が不幸になったか、
判るか!」殴って殴って、はじけたたスーツケースの札束の中に
漢は血だるまになって倒れた。

函舘の波止場、ポーと汽笛か鳩り響く……連緒船の甲板に立ちつくした伸次は、
遠ざかる函飴の町の灯をいつまでも見つめていた。
由美への慕情を残して……


(出所:「帰って来た小林旭」コロンビアレコードより、白鳥信一監修より引用)

   
     
   
渡り鳥シリーズの本当の意味での最終作。
今思うと、第一作の「ギターを持った渡り鳥」で
のラストで、ヒロインの秋津由紀(ここでは岡田由美)に、いつかは戻って
欲しいと言われ、「あゝ、きっといつかはね…」と言い残した伸次。
同じ函館の地に舞い戻ったと捉えることもできます。

浅丘さんの役名について、岡野・岡田と違いがありますが、本編の中では「岡田」
となっていて、シナリオでは「岡野」になっているようです。