ギターを持った渡り鳥  

 




 

過去を捨て、ギターを背にあてない旅を続ける渡り鳥の伸次が流れついたところは、
夕映えに赤くひなびた港町。
 
その夜、バー“ビヨン”で不良外人を殴り倒し、流しのサブの危機を救った伸次は、
マダムのリエに腕っぷしを認められて、サブの親分である秋津のもとへ連れてゆかれた。
 秋津の片棒をかつぐことを一度はことわったものの、
“どこへ行っても同じ”という風来坊気質もあってか、
伸次は秋津 のもとで働くことを承知するのだった。

伸次の仕事は、ゲームセンターの拡張を狙う秋津の命令で、
マーケットの住民を強制的に立ち退かせることであった。
腕にものをいわせる伸次の嚇しに、マーケットの住民は伸次を“鬼”と呼んだ。
だが、ただ一人秋津の娘由紀だけは、伸次をただの流れ者と思わず、
なにか過去の暗い影が伸次を非情な男にするのだと乙女心を燃やしていた。
伸次の腕の良さに満足する秋津は、沖合にある小さな島にアミューズメント・センター
を建てるために、邪魔になる丸庄漁業を潰そうと伸次を島に渡らせた。
 
「秋津さんが融資した三百万円の返済期日は、昨日で切れてますね」凄みをきかせた
はずの伸次も、丸庄の女房澄子が秋津の実の妹だと知るや、話を半ばに島を後にし、
この仕事を断った。
伸次が仕事を断ったために、馬場が密かに丸庄の船“あかつき丸”を担保にとりあげてしまった。

そんなある日、秋津のもとへ神戸の田口組のジョージというやくざが客分となった。
ジョージは、ヤクの密輸を沖合で取引するために秋津一家に船を借りに来たのだ。
伸次と会ったジョージは、見事なダイスさばきを見て、
以前にどこかで会ったおぼえがあるという。
二、三日後、ジョージと伸次を乗せた“あかつき丸”は、ヤクの取引のために沖合に出発した。

甲板に出たジョージは意味ありげに伸次に挑戦した。
「ダイスが振れるならハジキが使えねえはずはねえ、賭けようじゃねぇか」
空に舞う十円硬貨がジョージの拳銃でバシッとはじけた。
落下する硬貨に更に一発の銃声が響いた。
ハッとなったジョージに「引き分けだぜ」と左手に拳銃を持った伸次がニヤリと笑った。
「判ったぜ、手前は神戸市警のデカだ。
昔、俺の仲間をバラして、そいつが理由でサツをクビになりやがった、とんだお笑い草の野郎だ!」
殺気立つ船員を制しながらジョージは静かに言った。
「俺はお前のように卑怯な真似はしねえ、一対一の決闘だ。いいな!」
後甲板に分かれた伸次とジョージは二ヤリと笑うや引き金を引いた。
同時に二つの拳銃がはじけて宙に飛んだ。
改めて決着をつけようとした時、巡視艇があかつき丸に近づいて来たので勝負はお預けとなった。

その夜、“あかつき丸”を秋津に奪われて口惜しがる丸庄が何者かに殺され、
溺死体となって岸壁にうちあげられた。
丸庄漁業の事務員安川は、伸次が丸庄を殺したと思いこみ伸次に喰ってかかると、
船だけでも澄子に返すように秋津に頼んだ。

“仕事が済んだら船は返す”という秋津の言葉を信じて伸次はふたたびジョージと共に沖合に出発した。
 月光に映える海に伸次の“人殺しの歌(地獄のキラー)”のギターが流れる・・・
密輸取引は伸次のこの殺しの歌をバックにひそかに行われた。
「これで終わった。さあ、いい方をとりな」
ジョージは二つの拳銃をさしだした。
二つの影が離れた瞬間、そばで見ていた馬場の拳銃がいきなり火を吐いた。
「アッ」と叫んで伸次だけが海中に落ちた。
「ボスの命令だ。二人とももう用はねえ、二人とも消えてなくなれ!」馬場のセリフが
終わらぬうち、ジョージの拳銃が火を吐いた。グラッと馬場が崩れるように甲板に倒れた。
「滝!滝!」ジョージは暗い海面に伸次を助けようと必死に叫んだ。

その頃、ジョージと伸次が死んだと思いこんだ秋津は、子分達に酒をふるまって乱痴気騒ぎをしていた。
夜更けて、事務所の入り口に濡れねずみのような伸次が立った。
「秋津さんあんたにゃ悪いが、ごらんの通り生きてますぜ。さあ、俺と一緒にサツへ行くんだ。
今までの手前の悪事をみんな俺がバラしてやる」
事務所の奥に秋津を追いつめた伸次にリエが拳銃を投げた。
びっくりした秋津はリエを一発で倒した。
次の瞬間、秋津も、もんどりうって床に倒れた。
「やっとお前と水入らずだな」いつのまにか
ジョージが拳銃を持ちながらニヤリと笑って入り口に立っていた。

深夜の岸壁に対峙したジョージと伸次の姿が月光を浴びてシルエットのように映った。
ジョージの拳銃が動いたと同時に、石畳に伏せた伸次の銃口も火を噴いた。
バシッとジョージの拳銃だけがフッ飛んだ。
「俺の負けだ。今日限りお前のことは忘れるぜ」
パトカーのサイレンが近づいた。
神戸から密輸容疑でジョージを追ってきた沼田刑事と子分のサブが降りたった。

「もう一度、神戸に戻らんか」沼田の頼みを振り切るように伸次は言った。
「佐渡へでも行こうと思いまして、死んだ女の故郷なんですよ。
一度ぐらい墓参りをしてやろうと思って……」と言い残す伸次。

岸壁で見送る由紀たちの姿。
「ゆきちゃん、あの方きっと帰ってくるわ…」と気遣う澄子の言葉に、
「…二度と来ない…」かみしめるようにつぶやく由紀。
「何故?」と問いかける澄子。
「わかってる、あの人のことはなんでもわかる……」由紀の瞳がうるむ。

 ♪しぃおのぉ〜 においのお〜 ♪

 
 (出所:「帰って来た小林旭」コロンビアレコードより、白鳥信一監修より引用)

 

 
     
     
   

 渡り鳥シリーズの第1作であり、後に良い意味で類型化されて行く全ての要素が詰まっている。
 しかし、ここでの宍戸錠氏のキャラクターは後に展開されるコミカルな要素はまだ現れていない。

 今回、改めてビデオでラストシーンを見たが、浅丘ルリ子さんの可憐さは際だっている。