■PART2

名所古跡は数々あれど…

  • 赤木 そうだ。香港は安いぜ。旭さんのことだから、いろいろ買ってくるんじゃない?
  • 小林 大変だよ。今から…。あれもこれも…。
  • 和田 主にどんなもの?
  • 小林 第一に買って来るのが、マクレガーのゴルフ道具。
  • 赤木 そういう立派なの買って来たら、振らなくても玉が飛んじゃうよ。
  • 和田 世界に少ないマクレガー。日本にはないけど、あったらどの位するだろうね。
  • 赤木 何十万だね。
  • 小林 ところが香港は安いらしいんだ。
  • 和田 また、旭さんのロケ話に戻るけどさ、バンコックはルリちゃんの故郷なんだろ?
  • 小林 そうなんだって。でもね、彼女ね、バンコックにいた頃まだ小さいじゃない。どこがどうだか分からないらしいよ。
  • 赤木 (調子を変えて)戦争が終わってから約十六年、あゝ、バンコックの空の色まで違ってら…。
  • 小林 そうなんだ。結局は、土地柄も何も分からないらしい。
  • 和田 勿論、お袋さんたちは知っているだろ?
  • 小林 そう、ルリちゃんのおやじさんが会社に来たときさ、知識? を得るために聞いてみたんだ。なかなかくわしいよ。
  • 赤木 錠さんからも聞いたけどね、錠さんなんか、バンコックの地図と絵入りの本ととっくんでたよ。
  • 小林 なにしろね。人種は似ているとは云え、生活習慣の全く違うしかも常夏の国に行くんだもの。ちょっとぐらい調べて行かなきゃね。
  • 赤木 俺ね、週刊誌かなんかで読んだけどさ。オリンピックでね。日本の選手団が名所旧跡をみに行ったんだって、そしたら、あの立派な古跡を見て、なんだ、こんな石のカケラ、と云ったそうだ。つまんねえ、てんで街に出て映画を見たと云う話だ。
  • 小林 もったいねえな。



★右上へつづく ↗
波濤を越える渡り鳥東南アジアロケ風景

  • 和田 なにしろ、日活のやることはでっけえな。赤木さんは北海道まで、どんな船で行くの?
  • 赤木 四千トンの貨物船。
  • 小林 大丈夫か? 船酔…。
  • 赤木 これが全然強いんだ。
  • 小林 船ときたら、酔っちゃうだけじゃねえんだ。下痢までするんだ。
  • 和田 俺はなんでもいいから、船でも飛行機でも、ぐわんぐわん乗りてえや…。
  • 小林 だって、今度の正月作品の「俺の故郷は大西部」では、馬に乗るじゃねえか。
  • 和田 俺は馬でガマンしろか。兄貴連中はいいよな。(ふてくされた恰好をする)
  • 赤木 すげえんだってな。
  • 小林 保安官になるんだろ?
  • 和田 そうなんだ。俺はね。二世なんだよ。親父がアメリカ生まれでね、お袋が日本娘なんだ。今は父も母もいない訳。
  • 小林 死んじまったの?
  • 和田 分からねえ、本に書いてねえもの…。
  • 赤木 いたら、話が変わって来るものな。
  • 和田 じいさんのいいつけで、日本の友人に金を届けにやって来るのさ。
  • 赤木 ところが日本には悪い奴らがうようよしているって訳だな。
  • 和田 その悪る全部やっつけちゃう。
  • 小林 西部と関係ないじゃん?
  • 和田 あるんだ。俺の祖先は西部の立派な保安官だったんだ。昔。拳銃と星のバッジが家の宝物としてとっといてある。そいつをおじいちゃんがしてくれるんだ。ところがね、昔、俺のおじいちゃんのそのうえのおじいちゃんあたりから、西部でよくうち合いした悪の男がいた。その孫が日本に渡ってきてね、東京で密輸かなんかやってる。それで、二人は富士のスソノで決闘することになるんだ。
  • 赤木 西部劇の本場日本に移ったって訳だ。
  • 小林 富士山で決闘とは思いきったことをやらかすね。



俺の故郷は大西部富士山の裾野でロケした作品