たちこめる暗雲

けたたましく警報サイレンが響き、真っ暗闇の中に突然、まんまるのライトが白く浮き上がる。
その中に人影が浮かび上がる。
「止まれっ!」スピーカーから怒声が響く。
多くの人の足音が響き、ただならぬ様相を呈している。
ここは九州北部のK刑務所。重罪人が主に収容されている。
           
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「5名脱走、内2名は確保。他3名は現在、追尾手配中であります」
所長の部屋では昨夜の事件り結果が報告されていた。
報告を終えた係官が部屋を出た後に
刑務所々長はつぶやいた「黒泉三兄弟か…。何か起こらないといいが…」
所長の心配とは裏腹にやがて、とんでもない事件が勃発する。
             
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黙々と坑内で働く炭鉱夫たち、それを監視する鉱山には不似合いな格好の男たち。
室田鉱業の子分たちだ。
ジャックナイフ(飛び出しナイフ)の刃を出したり納めたりオモチャのように扱っている。
「おめぇ、この間の車券はとったか?」二人が競輪の話に夢中になっている。
その側で一人の年老いた鉱夫が真っ赤な顔で倒れた。
鉱夫仲間がかけよって心配そうに抱き上げる。
それを見た室田の子分の一人は
「じじいっ、くそ仮病なんか使いやがって、さっさと働け!」
そう言うと同時に老人の横腹を蹴り上げた。
「何をするんだ!」鉱夫の一人が叫ぶと、子分たちに飛びかかって行った。
子分たちと鉱夫連中がもみあいとなる。
「やめろぉ、やめねぇか!」割って入ったのは班長の城島だ。
相変わらずキザな革コートをはおっている。
「おねげぇだ班長、ちょっとは休ませてくれっ!」
一人の鉱夫が城島の足下にとりすがった。
それを冷たく足蹴にした城島は「さっき磨いたばかりなんだよ」と
手袋で靴のホコリをはらった。
「いいか、お前たち。お前らの借金がたんまり残ってるんだ。もっと、しっかり働いてもらわねぇと、お前らのかあちゃんや娘が泣きを見るぜ」冷たく言い放った。

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ツルハシとショベルの音が響く中で鉱夫どうしが小声で話しあっていた。
「おら、もう我慢がならねぇ。炭鉱で骨を埋めるのはいいが、あんな奴らのいいなりにはなりたかねぇだ」
「そうだ、おらも先代の社長のお嬢さんにかけあってみるだ」
室田鉱業の子分が通りかかり、会話は途切れた。

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目にまぶしい病院の白い壁の下では、帰り支度をする由紀の姉の夕子だった。
「かあさん、やっとおうちに帰れるね」信男はうれしそうに夕子の手をとった。
その後ろには由紀と信男にせがまれてついてきた伸次が笑顔で立っていた。                 

              
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