<スタッフ> 製作・監督・脚本:井伊下弦 撮影:戸国奈氏 照明:四全甲 美術:熱田加奈 録音:猪井音子 編集:牟知屋駒千也 音楽:梨田是也 製作主任:王紀美香
<キャスト> 滝伸次 朝岡里璃子 獅子怒丈治 太高雄三 北風由子 藤山無甲 黒木マリ 歩手珍亭文楽 松尾 香 高島 奥 近藤 狭 広松二郎 青田啓治 その他大勢
切り立った崖の狭間の道を歩く伸次。 突然、降って湧いたように崖の陰からスコップやツルハシを手にした数人の男たちが現れて 伸次の前にたちはだかった。 「この先は遠さねぇ」一人の男が伸次に威嚇するように言った。 「こんな山の中じゃ山賊が出るのかねぇ・・・」伸次はとぼけて言った。 「ごちゃごちゃ言わねえで、早く戻れ! 俺たちゃ室戸鉱業にゃ負けねえだ」 そう言うと、スコップを振りかざして伸次に殴りかかってきた。 伸次が軽くかわして、男の顔面を殴ろうとした時。 「待ってください」と女の声が伸次の耳に届いた。 声の方を見ると、走ってきたらしく息を切らしながらよろけるように由希がやってきた。 20歳過ぎの瞳の美しい彼女は男たちに割って入り伸次に向かって侘びた。 「この方は関係ないでしょ、そんなことをしても何の解決にもならないわ。やめて下さい」 男たちの集団に向かって訴えかけるように言った。 男たちは不満げにもゾロゾロと一団となって引き上げて行った。 「ごめんなさい。知らないとはいえ、失礼なことをしました・・・」 由希は美しい瞳を伏し目がちにして伸次に言った。 「大した歓迎だな」伸次はギターを抱えなおして歩き出した。 「あの人たち、気が立っているんです。自分たちの仕事場が奪われると思って・・・」 「何か事情がありそうだな」 二人は並んで歩いた。 「初めてお会いした方に、こんなことをお話するのは・・・」 「じゃ、聞かないことにしよう。関わりになる気はないんでね。 ところであんた、このあたりで白石農園というのを知らないかい?」 「えっ、それは私の義兄の農園です。これから帰る所ですが、何かご用でも?」 「実は、そこで働く西元さんって人に用があるんだ」 「西元は私の義兄です。ご案内しますわ」 由希はほっとしたように微笑んで言った。