昭和30年代の半ば、北九州の炭鉱は、石油エネルギーへの転換により、それまでの炭鉱景気に打って変わり多くの炭鉱が閉山に追い込まれていた。
危険な鉱山
大音響と共に灰色の煙が上がり山が崩れてゆく。
ヘルメットをかぶった男たちが口々に叫んでいる。
ガスマスクをつけた男たちが煙の中に入る。
ぐったりした男が助け出され、周りは蜂の巣をつついたような騒ぎ。
離れた所で野次馬めいた男たちが話している。
「そやから、いわんこつ、こげなことになっつまうだ・・・」
「また、ガスかいの?」
「室戸鉱業の仕事ばぁ、できんて・・・」
野次馬たちの目の前を頭から血を流し、ぐったりしているけが人が次々と運び出されて行く。
たちこめる煙の中から出たきた男たちが一人の男に詰め寄った。
男は背広の上着を肩に掛けただけの現場には似つかわしくない格好をしている。
「班長、このままじゃ仕事なんて、やってられんです」一人の鉱夫が上着の男に詰め寄った。
他の鉱夫たちも班長と呼ばれた男に詰め寄り次々と苦情を言った。
すると上着の男は懐から突然、
コルト32オートマチックピストルを取り出して一発、空に向けて発射した。
「おめぇらなぁ、文句を言う前に自分たちの借金を返せ。誰のおかげで仕事があるんだ」
凄んで言う上着の男の勢いと、銃の前には男たちも素直にひき下がるしかなかった。
そこへ一台の乗用車が横付けされ、中からは杖をついた初老の紳士が降り立った。
紳士は葉巻を口の端に加えて言った。
「ごくろうだな城島。まっ、そこまでにしなさい」
城島と呼ばれた上着男は突然、それまでの勢いをなくし
「社長・・・こんな所まで来ていただかなくても・・・」
その言葉をさえぎるように紳士は鉱夫たちに向かって言った。
「みなさん、私はあなた方及び家族の皆さんの幸せを思って、この鉱山を営んでいるのです・・・」
紳士の演説が続く中、離れた一角では、ひょうきんな雰囲気の男が一人、仲間の鉱夫相手に話をしていた。
「ああやって言ってるが室田鉱業なんてのは、やくざじゃねぇか」
「そうだ、今さら、こんな鉱山をいくら掘っても石炭なんか出ねえや」
「これで三度目だぜ事故が起きたのは・・・。室田のヤツが前の白石社長を悪だくみで陥れて、ここを手に入れたんだ・・・」
そこへ、室田鉱業の若い衆が通りかかって
「おめぇら、こんな所でこそこそと、ちゃんと社長の話を聞け!」と啖呵をきった。
