高音の魅力歌手としてもイケる
児井 話が飛んじゃったが・・・。旭の次回作品は鳴門海峡を舞台にするつもりだ。(*どの作品?企画だおれ?)
原 それはいい。淡路島が僕の選挙区だから言うんじゃないけれど・・・。(笑)
児井 マリリンモンロー主演の『ナイヤガラ』とか『帰らざる河』なども大自然をバックにしている。
原 それと同じだね。雄大な自然をバックに、旭を活躍させるのは良い。
児井 山崎巌シナリオ・ライターそれに山崎徳次郎監督と僕の三人が、鹿児島ロケの帰りに鳴門を見た。
三月頃からやろうという話だった。
原 旭は今、北海道ロケ?
児井 そう、医者と一緒に行っているんですよ。
(*『大草原の渡り鳥』ロケで阿寒湖周辺に向けて出発)
原 スーパーマンも病気になるんだね。(笑)
児井 なにしろガンバリ屋でね。医者が旭を馬に乗せるな、というんだけど・・・。
つまり、フキカエでやれというが、旭は自分でやるといって承知しない。
二階からでも平気で飛び降りるんだ。
原 そんなところが旭の魅力なんだな。
児井 旭の魅力はまだまだ掘り出せる。
原 魅力というのは人柄なんだね、政治家でもそうだ。殊に演技をやる人間は、
その魅力が一挙手、一投足に現れる。旭の動きが青少年にピッタリ向くんだな。
彼の身体からなんとなしに発散するのが“青春の匂い” とでもいうんだろうか・・・。
児井 新鮮な味なんだ。
数年前、皇太子をモデルにした『孤独の人』で津川雅彦を売り出した。
その友人の一人(タチ役)を旭が演じたわけです。
学校に反抗して、最後に学校に負ける・・・というストーリーだったが、
そのときの旭がイケるというわけで、以来、ドンドン出てきた。
“三悪” の一人になったりして・・・。
原 映画館の写真を見ると、顔をしかめて、サア行くぞ、というような場面がある。
あれが良いんだろうね。また彼の歌も魅力があるね。
児井 歌もいい。歌が上手くても魅力に乏しい人がある。
しかし、旭はいい。三橋美智也に匹敵すると思う。
大体、歌で長続きするのは、高音の人に多い。低音は伸びきれないものだ。
小林旭だったら、映画をやめても歌手としてやっていける。
原 むずかしいもんだね。そういえば守屋浩(*当時のコロムビア所属人気歌手)なんか
変な声だけれど、何度も聴いてるうちに味が出てくる。(笑)
児井 あれは奇妙キテレツな高音だ。(笑)
しかし、自分が充実していれば、高音が良い。伸びる率が大きい。
今度、コロムビアがビルを建てる。小林旭が四本柱の一本になっている。
原 儲かっているんだろうね。
児井 歌手が大きくなるためには映画とレコードの両方に備えることだ。
原 映画で当てたのは何かね?
児井 『湯の町エレジー』も僕がプロデュースしたが、レコードが四十五万も売れた。
最近の旭のものでは「ズンドコ」とか「ダンチョネ」がすごく売れた。
大体、二、三十万かな。
原 二、三十万も売れるの・・・。すごいもんだ。
(*当時は再生の為の電機蓄音機<プレーヤー>の普及も少なかった)
児井 柳の下に何匹もドジョウはいない・・・というが(笑)小林旭の場合は何匹もいるんだな。
歌と人柄の魅力、それに身体がよい。拳闘、馬・・・・スポーツならなんでも来いというわけだ。
いま考えているのは・・・旭に空手をやらせる。手ばかりじゃない。
足も使っての踊りスタイルで歌いながらやろうというのだ。
原 スポーツ神経が発達してるんだね。
また、映画でやっているから、歌も三割方よけいに売れるというわけだ。
大衆に受けるのも当然だよ。
小林旭よ結婚するな!
児井 “流れ者”や“渡り鳥”ものは、背景が良いから客もつく。
原 それにカラーだから、よけい良い。地方のカラーを活かしていけるわけだ。
児井 宇和島で『南海の狼火』をやった。それで、松山がまた呼んでくれた。
土地の絵はがきに載っている風光明媚な所を全部撮す。
宮崎や大島など、ロケに行ったところは、どこもみんな大入り満員だった。
ホテルなんかもお客を断る始末だった。
原 小林が泊まったところに新婚旅行しよう、なんてことも考えている人がある。(笑)
児井 新潟の“オケサ”を映画に入れたんだが、エキストラもよく揃う。
バスの車掌さん、料理屋の女中さんなんか、みんな歌えて踊れて・・・。
原 それは便利だ。(笑)映画で歌も聴かれるし、踊りも見られる。
おまけに景色が良いんだから、楽しいはずだよ。
小林は細いズボンをはいているね。昔の車引きみたいなヤツ・・・。
あれは小林から流行ったのと違うかね。銀座なんかでも、ああいうのが大流行だ。
児井 地方の小屋へ行くと、舞台アイサツがある。
一回目はタダでやるわけだが、二回目は小屋から金をもらう。
ファンは旭が歌わないと承知しない。小林は義侠心があるから歌うが・・・。
原 そういう人間なら伸びる。小林はもっともっと伸びるな。
児井 小林は、変わったものをやらして下さい。と江守常務に言ったが・・・。
常務から“渡り鳥”を三十年やるんだ、と怒られた。
原 それなら僕も三十年、書き続けるよ。代議士落ちたら、日活に移るよ。(笑)
僕は小林に、もっとスーパーマン的にやれ、と言いたい。
ケガしたり、ハーハーとうめいたりするが、それはやらない方がいい。
またカードやサイコロだが、あれはちょっと後味が悪いね。
児井 彼は現代の若い忠治、次郎長なんだ。
原 それから小林は結婚しない方がいい。多くのファンのためにベトベトするな、と言いたい。
清潔な精神と身体で大いに青春美を発揮してもらいたい。
児井 結婚するならサラリーマンになってからしろ、と言うんですよ。
原 大衆を魅了するために結婚はしない方がいい。旭は二十歳かね、二十一歳かな。
児井 まだ二十三、四だ。日本の人口は八千万だ。一億六千万の目でにらまれているんだから、
結婚はサラリーマンになってからしてもらいたい。
原 若い男女のアイドルなんだから・・・。
児井 彼には男の客も多い。打ち込みは九時だが、その割引を狙って客が並ぶ。心のうつろな人とか、
お金の少ないファンが多いのです。
また地方にお客が多い。歌も地方で受ける。この点が小林の徳なところだ。
原 池田さんの人気は、庶民のための政治をうたっている点だ。地方遊説で、その根がしっかりと
下りてゆく。地方から全国的に伸びてゆける。
児井 映画でも歌でも地方から伸びてゆくのが強い。小林はその点、実に強い。
小林が地方の映画館でアイサツするのは地方遊説みたいなもんです。(笑)
原 『海から来た流れ者』を僕は地方の小屋で見た。映画館は十時に開くんだが、その前からすでに
長蛇の列でおどろいた。早く開けろというわけで、巡査まで出てきましたよ。(笑)
四回見たという人もいる。
児井 そういうファンは全く有り難い。(笑)
原 浅丘ルリ子は目が大きい。小林は目が小さいね。
あれが良いのかな? ウン、象の目と言った感じ・・・。(笑)
児井 それはおもしろい表現だね・・・。(笑)
原 さっき、児井さんは旭のファンは心のうつろな人、お金の少ない人と言ったが・・・。
そういう人に愛される小林旭は、やはり大衆の心を掴んでいるといえるね。
児井 都会的に偏らず、映画、レコード、ラジオで受ける点が強い。
大体、流行歌なども最初から東京で流行するというのは少ないのです。
地方、殊に関西方面から段々伸びて来て、それがいつのまにか東京にやって来るんです。
小さな波紋がだんだん大きく広がるように・・・。
原 明日、池田さんに言ってやろう。小林旭みたいに大衆の心を掴みなさい、と・・・。
*原健三郎氏の原作とは、正確にはシリーズの原案のこと。 出典:別冊 近代映画 大草原の渡り鳥 特集号
<文章中の注>
注1:ゲーリー・クーパー
1901年モンタナ生まれ ハリウッドの二枚目スター。初期の甘いマスクから初老の頃まで多彩な役柄で活躍。
主要作品:「モロッコ」「平原児」「ヨーク軍曹」「打撃王」「誰がために鐘は鳴る 」「真昼の決闘」など
注2:「新しき土」(1937)
日本初の国際合作映画。ドイツとの合作。監督は、伊丹万作とアーノルド・ファンクの共同。
出演:小杉勇、原節子 伊丹万作の意図が伝わらず、作品的評価は低い。