「渡り鳥シリーズ」「流れ者シリーズ」で絶妙のコンビだった、アキラさんとジョウさんも、昭和36年(1961)の春に宍戸錠さんが『ろくでなし稼業』で主演級となった。順調な滑り出しで、主演本数を重ねて3作目の『用心棒稼業』を撮影中の錠さん。シリーズ7作目の『大海原を行く渡り鳥』を撮影中のアキラさんと、撮影所でバッタリ会って、久しぶりのおしゃべりといったシーン。思わず、銃の扱いの話に夢中になって・・・。

《昭和36年、初夏の日活撮影所での対談》

  
  
   旭 最近、撮影所に来てても、めったに顔が合わないね。

錠 すれ違いだからね。

 ほんとだ・・・。

錠 相変わらずロケに飛びまわってんの?

旭 そう、先月十二日に発って、長崎に行ってきた。

錠 ものはなに?

旭 「大海原を行く渡り鳥」・・・・

錠 おれは、二十四日に発って、天草と熊本市方面だよ。

旭 長崎から帰って来たら、こんどはすぐ伊豆ロケさ・・・。

錠 俺も無いけど、アンタも休みのない男だね。

旭 それはお互いさまよ。ところでね、今度ライフル買ったんだ。それを長崎に持って行ったよ。

錠 ぶっ放したの?

旭 いやいや(言葉を濁らして)劇用でね。錠さんのコルトの早射ち0.65秒に対して、
  おれがライフルといったわけよ。

錠 ガンじゃ、つまんねえって訳か?

旭 そう、そうね。(笑)

錠 大きく出たぞ!。(笑)

旭 ところでよ、天草は何日ぐらいいたのさ。

錠 二十四日に発って、そうさな十日間ぐらいかな・・・?

旭 なげえな。あきちゃうぞ。

錠 いや、なにね。天草と熊本ばかりじゃねえんだ。・・・神戸に行くのさ。

旭 でもね、今の九州は暑いぞ。

錠 水にでもつかるさ・・・二十三日にね、本隊が出かけちゃって、おれは川崎大師のまつりに出るんだとよ・・・。

旭 なんで・・・?

錠 どうせ、あいさつだろ。

旭 へえ・・・。

錠 それで、二十四日の朝(両手をひろげて)ぶーんとひとっ飛びだ。

旭 俺も、今度またヘリコプターの仕事だよ。「都会の空の非常線」

錠 おれもやりてえな・・・。それでまた九州の飛行場ゆきか?

旭 わからねぇ。

錠 しかし、よく同じ場所にロケが重なるね。

旭 アンタの「ろくでなし稼業」とおれの「でかんしょ風来坊」

錠 それは伊豆だった・・・。

旭 ところがね、伊豆では思いっきりぶっ放したよ・・・。

錠 なにを?

旭 ライフルさ・・・。でも淋しいよ、やっぱり、錠さんがいないと・・・。

錠 おれもそうなんだよ。ロケに行くだろ、すると、アキラは元気・・・なんて。

旭 そうなんだ。旭、てめえ、錠さんと何故一緒に出ねぇんだよ・・・と来る。

錠 ・・・でもね、旭の人気はすごいね。おれのロケに来てまで、
  旭、旭って云わなきゃならないのかと思うよ・・・。(笑)

旭 同感、同感(と手をパチパチたたく)この前ね。長崎で、「用心棒は来ねえのか!」っていうんだよ。
  用心棒っていうから、“おれにはそんな者はいねえよ”と云い返してやった。
  そしたら“とぼけんな、錠だよ”ときた。なるほどねと思ったよ。

 

寒中の水泳

錠 そりゃ、くさったね?ところでね、今まではあんまりやんなかったけど、今度、熱海でアンマやったよ。

旭 (プッと吹き出して)パンマ?

錠 冗談じゃないよ。ものすごいコリ方なんだよ。

旭 錠さんにしては珍しいじゃないか。よくおれと、まくらを並べてやったけど、くすぐったいとか、なんとか云って
  たのが・・・。風呂あがりのアンマってこたえられないよね。昼はアクションでくたくただもんな。

錠 そうなんだ。その日はとくに英明さんと二人で張り切っちゃってさ・・・。

旭 なんの作品?

錠 「用心棒」。

旭 用心棒がアンマとっちゃいけねえよ。

錠 でも、いい気持ちだった・・・。(肩をもみ)アンマの味をしめちゃったよ。それでちょうどその晩、ポリドール
  の人がレコードを持って来ていたんだ。

旭 今度の新曲?

錠 そう、「とことんやれな節」。

旭 面白そうじゃないか?

錠 うん、アンタにはかなわないけどさ。アンマしながら聴いたから、なおうまく聴こえるのさ・・・。

旭 そりゃそうだろう。アンマでトコトンヤレだもの・・・。(笑)

錠 それはアンマリだ(笑)。

 −しばし、お二人の大笑−

旭 ところで、何曲になった?

錠 「三つの竜の刺青(ほりもの)」の主題歌で十一曲。

旭 すごいね。

錠 そうなんだ。その日はとくに英明さんと二人で張り切っちゃってさ・・・。

旭 なんの作品?

錠 いや、大したことァねえよ。

旭 でも、長崎に行った時ね。旅館の前にジューク・ボックスあるんだ。その中に、
  「ろくでなし稼業」と「旅笠道中」が入ってたぜ!

錠 そうかい。アンタの歌だって・・・。

旭 よくね、パチンコ屋でかけてるのを聴くことがあるんだ。自分ながらウンザリさ。

錠 熱海では、街頭のスピーカーに流していたよ・・・(笑)

旭 なお、いけねえや・・・(笑)

錠 お互いにがっかりしちゃうね・・・。

旭 しかし、このごろは歌づいてんじゃない?

錠 そう、なんでも歌っちゃうんだから・・・。

旭 錠さんは詩人だから、歌にもムードがあるよ。

錠 おいおい、あまりおだてないでくれよ。

旭 おだてじゃないよ。ほんとだよ・・・。

錠 じゃ、スナオに聞き入れましょう・・・。

旭 ところで熱海で泳いだって?

錠 うん、泳いだ泳いだ(口調を変えて)寒中を思わせる海水にざんぶとばかりに飛び込んだ・・・!

旭 いい気持ちだろう?(笑)

錠 そりゃ、云うに云われぬいい気持ちだよ、といいたいところだが、とんでもない。
  こごえ死んじゃうよ・・・。水から上がったら、唇の色気がなくなってたよ。

旭 ・・・スタンドインを使わなかった訳だ、・・・エースの錠の寒中水泳!ご覧じろ!ってなもんだな?

錠 最初はね、ちゃんとスタンドインが予定されていたのさ。ところが迫力がないときたね。よっしゃあてなもんよ。
  飛び込んだのはおれだけじゃねえんだ。金子さんと洋子ちゃんもだ(金子信雄と南田洋子のこと)。

旭 金子さんは、あまり泳げないぜ。

錠 そうなんだよ。全然ダメらしいんだ。

旭 おれも夏だったけど、一回あったもの・・。

錠 とにかく、金子さんと洋子ちゃんが飛び込んだ。

旭 ウン!

錠 洋子ちゃんは泳げるから、すぐ浮いて来たけど・・・。

旭 浮いて来ないの?

錠 それが飛び込んだところとは、およそかけはなれた所に浮いたんだよ。

旭 引き潮だった?

錠 分からねえ。とにかく、助けるのにみんなで大騒ぎしちゃったよ。

旭 金子さんも命びろいしたって云うわけか・・・。

錠 監督さんは蒼くなってたよ。

旭 蒼くもなるさ・・・。


バンサとビフテキ

錠 ところで、おれたちは何の対決だっけ?

旭 ガンの話さ。

錠 じゃ、とんでもない道草じゃねえか。

旭 では、本題に戻りますか! では、エースのジョー宍戸さんから・・・。

錠 いえいえ、早速お控えなすってくださいまして有り難うございやすが、どうぞライフルのお兄ぃさんから・・・。

旭 ・・・と云われちゃ後には引けねえアキラさん(自分で云ってテレる)。

錠 テレることはない・・・。ライフルの話など。

旭 実はね、さっきね。ライフルを長崎に持って行ったって話したろう?

錠 ウソか?

旭 いやいや、持って行ったことは確かさ。おれに勧めたヤツがいるんだよ。

錠 監督?

旭 違う。バンサ(藤村有弘)

錠 彼もライフル持ってんじゃない?

旭 そうなんだ。オレも持って行くから、持って来いって云うんだ。

錠 長崎でドンドンパッパッやるって寸法だ。

旭 すごく、いい射撃場があるからってんで、ニューの買ったばかりのライフルと、猟銃三丁持っていったのさ。

錠 仕事が忙しくって出来なかったというわけだ。

旭 違うんだな、これが・・・。当のバンサは持って行かなかった。

錠 汽車時間に急いで忘れてしまった!

旭 違うんだ。長崎には、初めから射撃場なんてないんだ。

錠 (プーッと吹き出して拍手)彼に一本やられた訳か・・・(笑)

旭 そうなんだよ。あの重いのを長崎まで往復背負って歩いてさ、ヒドイ目にあったよ。

錠 ああ、お疲れさま・・・。

旭 それがね。わざわざ、重いものを東京から運んで来ていただいて、そのお礼に・・・なんだと思う?

錠 彼のことだから・・・。

旭 ビフテキをおごっちゃうのさ。

  −二人の大笑−

錠 今頃、彼は連続くしゃみしてるぞ!

二人で演りたいね

旭 ところで、本題本題「用心棒稼業」の時にさ。六ポーズ見せただろ?

錠 あれ、仕掛けたんだよ。でも、一晩考えたよ。

旭 あの撃ち方はいいよ。

錠 はじめはガンは一挺だ。そして、ふいっと二挺になる。

旭 一晩の効果はあったよ。

錠 それから天井に放るところがあったろう? あんとき、脳天に当たりそうになって、ひんやりさ・・・。 

旭 当たったら最後、頭がガンガンすらァ。

錠 うわァやられた。・・・アンタのライフルはどうなの?

旭 これがまた、ひと苦労なんだ。ソウテンするとき、レバーをがちっとやるだろ。
  左手で銃を持って右手でレバーを動作させる時はいいのさ。
  ところが、アンタのガンみたいに、右手でくるっと回しながら、ソウテンするんだ。
  このときにね、指をはさんじゃうんだ!

錠 おっかないね。手が豆だらけ?

旭 いやいや、手袋かけてるからなんでもない。でも、なれるまでさ・・・(笑)。

錠 バカだね(笑)

旭 お互い様だ(笑)あのね、錠さん、一度日本で一番早射ちに自信のある人をテストしてみたいね。

錠 おれも考えてたよ。しかし、タイムウォッチじゃ正確さが分からない。

旭 だからさ、ガンの横っちょでもいいし、タイムウォッチなんか、時間を計るものをつけておいてさ。
  抜いてダーンとやりさえすれば、ちゃんと秒が出るようなのをさ・・・。

錠 そりゃ、面白いよ・・・なにしろ、おれたちは、そういうタイムウォッチができると一位だよ。
  世界ランキングの・・・。

旭 錠さんはピストル、おれはライフルだ。(笑)バカなこと云っちゃったね。

錠 たまにはいいよ。しかし、また二人で演りたいね。

旭 おれもそう思ってんだ。

錠 いちばん印象に残ってんのは、北海道だよ・・・。

旭 洞爺湖のほとりで、馬を駆っとばしたっけね。大体、海を渡っていくと、気分がちがってくるよ。

錠 他国に行ったような気持ちだもの。

旭 よく方々にロケしたね。

錠 そのたびに、明日のガンさばきを研究しようなんて、夜も寝ないでやったっけ。

旭 風呂に入ってまでも、シブキをあげてやったっけね。

錠 なにしろ、楽しかったよ。

旭 今となれば、思い出のひとつだね。

錠 九州の青島ロケの時さ。

旭 「太平洋のかつぎ屋」だった。飛んでる飛行機から降りたんだから・・・。

錠 おれ自身は照れてんだよ。

旭 照れることはないよ。最高ですよ。あんときの、背中から狙われたのが、土ベタに影となって映る。

錠 あの想定はよかった。

旭 その次だよ、よかったのは。さっと転がってダダーンだ。
  ああいうところは、錠さんでないと出来ない業だよ。

錠 どうも、どうも。

旭 まったくガンは楽しいもんだね。

錠 こんなに愉快なもんだとは知らなかったよ。

旭 そのうち、また一緒にやらしてくれるだろう。

錠 俺も、そう願ってるよ。

旭 とかくこの世はままならぬか。

錠 うまいこと云うね。(助監督が旭を迎えに来る)

旭 まいどのことで、じゃ。

錠 あとでセットをのぞきに行くよ。

旭 お先-------。

 


《管理人コメント》
さすがにゴールデンコンビですね。会話の息もぴったり。日活アクション全盛期の楽しさが、そのまま伝わります。テンポの良いやりとりは、渡り鳥・流れ者シリーズの会話を思わせます。また、お話の内容からは、演技者としての努力と苦労が読みとれます。銃の扱いひとつとっても自分たちで研究されたことで、あの楽しさが生まれたのでしょうね。まさに、素晴らしい夢の世界を残していただいたお二人に改めて感謝いたします。
この後、お二人のコンビ復活は、『関東遊侠伝』(1963)まで待たなければなりませんでした。


 資料:「日活西部劇読本」近代映画(昭和36年6月臨時増刊号)より