俺もお前も流れ者

ギターを持った渡り鳥
口笛が流れる港町
海から来た流れ者
渡り鳥いつまた帰る
海を渡る波止場の風
赤い夕陽の渡り鳥
南海の狼火
大草原の渡り鳥
大暴れ風来坊
波濤を越える渡り鳥
風に逆らう流れ者
大海原を行く渡り鳥
渡り鳥北へ帰る
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革ジャンスタイルの若者たちが映画館に群れていた。

 1959年の秋『ギターを持った渡り鳥』が封切られた。浅草の映画館の前には宣伝スチールを見て、革ジャンスタイルを真似た若者たちが列を作っていたらしい。

 渡り鳥シリーズ、流れ者シリーズの映画の中での代表的なスタイルをとりあげて、当時のファッションの流行とも照らし合わせて検証してみたい。
 この昭和34〜36年頃は、まだ「戦後」の名残りが色濃くあったということがポイントでもあります。セリフの中にもそれらは登場している(「闇市でうろついていたお前を・・・」など)ことでも証明され、
『波濤を越える渡り鳥』では、太平洋戦争そのものが題材として登場する。このあたりを踏まえて、滝伸次・野村浩次のスタイルを考えたい。

 

■ギターを持った渡り鳥 1959.10.11 封切
 革ジャン(ライダータイプ)&スーツにネクタイ

 革ジャンスタイルは、当時の流行であった「カミナリ族」のライダージャケットである革ジャンが原点と考えた方が順当といえる。マイトガイにはカミナリ族スタイルが似合う。革ジャンの下は白いトレーナー。(下欄参照)

 本編の中では、革ジャンスタイルは途中まで。秋津組に入ってからはグレーのスーツにネクタイというスタイルになる。このカッコウで、秋津の娘の前でピアノで見事にショパンを弾きこなす。ラストでは、また革ジャンスタイルで船に乗る。ここでの革ジャンスタイルは、戦後の米軍・特攻隊スタイルへの憧れの流れとして捉えたい。             

 

 

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■口笛が流れる港町 1960.1.3 封切
 フリンジレザージャケット(ガンホルスター付)

 本作品は当初、渡り鳥シリーズではなく独立したものとして企画されていたらしい(佐藤利明氏談)。この一編は西部劇をかなり意識したものとなっている。スタイルもフリンジ付きのジャケットであり、袖にはガンホルスターが付くというアイデアが盛り込まれている。そして、白く長いマフラーは「正義」の象徴とも云える。半長靴スタイルのブーツにも注目したい。ウエスタンスタイルに特攻隊スタイルをミックスさせたような当時の若者にとっては、こたえられないスタイルであろう。また、前髪を長くしたリーゼントスタイルは地方で流行した。                  

 

 

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■海から来た流れ者 1960.2.28 封切
 トレンチコートにスーツ

 季節の関係もあり、ダブルのトレンチコートで登場。渡り鳥との差別化として、流れ者はスーツが代表的なスタイルとも云える。トレンチコートスタイルで馬にも乗るし(本編にはなく、スチールのみ)、ムチも使うのが特徴。ラスト近くでは軽快なジャンパースタイルで馬に乗る。このジャンパーデザインが当時、流行していたと記憶する。

 

 

 

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●1950年代ファッションの影響
太陽族 
 1950年代後半のファッショントピックは「太陽族」ファッションといえるでしょう。石原慎太郎の小説を原作とした『太陽の季節』や『狂った果実』(*石原裕次郎主演)のスタイルから生まれた「慎太郎カット」やサングラス、アロハシャツなどのビーチスタイルで若者は街に繰り出した。これらの前にはジャズブームを受けてのマンボブームを背景にした「マンボスタイル」が若者達にうけていた。
 太陽族の代表のようにイメージされた石原裕次郎は、後に『嵐を呼ぶ男』でイメージチェンジを図る。(*それ以前に東宝でカメラテストを受けたが、当時のプロデューサーがハネて、同じ路線で後に加山雄三がデビュー)

 

カミナリ族
 
1950年代末の全国の町に爆音を響かせてバイクで走り抜ける若者達が目立った。白いマフラーに革ジャン、ゴーグルとヘルメットのスタイル。このスタイルの基本は特攻隊と云われている。また、戦後間もない頃の闇市にたむろした特攻隊崩れのイメージを模しているともいわれた。心情的には西部劇スタイルであり、当時の正義の味方「月光仮面」の影響もある。また、革ジャンの下は白いトレーナーという裕次郎スタイルの影響もある。1961年11月22日には、日活映画で『カミナリお転婆娘』の作品があります(出演:清水まゆみ、沢本忠雄)。



 

 

ロカビリーファッション
 
1958年2月に始まった「日劇ウエスタン・カーニバル」のひとつから生まれた「ロカビリー」。リーゼントヘアにアロハシャツ、スリムなマンボズボンが代表的なスタイル。平尾昌晃、山下敬二郎、ミッキー・カーチスのスターが生まれた。このロカビリースタイルと「ダイナマイトが百五十屯」は関連性が深いと考えられる。

 

■渡り鳥いつまた帰る 1960.4.23 封切
 フライトジャケット風ジャンパー

 フライトジャケットを原型としたようなデザインのジャンパー。 シリーズ中、異質なデザインである。しかし、スタイルの原型を、方やウエスタン、もう一方を特攻隊スタイルとすれば(『南国土佐を後にして』をシリーズの原型として、主人公の兄が特攻隊で出撃することも含めて)、この一編は先の『ギターを持った渡り鳥』に次いでのものと考えると、つながりやすい。このスタイルも納得できるものである。アイゼンハワー・ジャケットにも似ている。このあたりも戦後を匂わせる。本編のストーリーでも日本軍の隠匿物資がモチーフとなっている。

 

 

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■海を渡る波止場の風 1960.5.28 封切
 スーツ&ツートンカラー・ジャンパー+サングラス

 前半は白いスーツスタイルで登場。「ズンドコ節」をスーツ姿で歌う。後半は一転して軽快なスタイルの前見頃が黒のレザー、袖が赤色のレザーという凝ったつくりのジャンパー。シンプルなシルエットでカラーが際だっている。サングラスからのぞく仕草がおちゃめ。このジャンパーのデザインも切り替えのポイントが「ヨコスカジャンパー」を思わせ戦後を感じさせる。

 

 

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■赤い夕陽の渡り鳥 1960.6.29 封切
 レザーベストにチーフ

 ここでは明らかにウエスタンスタイルを意識して、さらにそれを日本風に消化している。冒頭の青空をバックに馬に乗ってバーッと現れ、主題歌がかぶるシーンは映画館の大画面で是非、体験していただきたい。もう、それだけで世界に引き込まれます。ベストの丈、身頃のカーブの具合、全てがみごとにキマッてます。パンツの薄いレンガ色もいいですね。

 

 

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ガンブーム
 
おりからの西部劇映画の人気や、テレビ映画の西部劇ブームを受けて、銃の話題、精巧なオモチャの銃がブームとなる。まさに、銃を扱う日活アクション映画にとっては絶好のチャンス。

 紙火薬を使うブリキのピストルやプラスチックの弾を飛ばすプラスチック製のピストル、お手軽な銀玉鉄砲など、それにリアルなモデルガンまで、男の子には嬉しいばかりのピストルオンパレードの時代がありました。その後、ステージガンの技術も進み、空薬莢が自動排出される本格的なブローバック式まで登場しました(初登場『太陽への脱出』MGC協力)
 ウエスタンタイプのピースメーカーのリアルな銃から始まり、ワルサーやルガーなど軍用銃のモデルガンに人気が集まる。また、後には007に代表されるスパイ映画ブームで、様々なタイプのモデルガンが売り出される。

 

1960年の映画で銃をテーマにした内容やタイトルに関連した作品をあげてみました。

1.拳銃の掟         (大映)
2.二発目は地獄行きだぜ   (東映)
3.やくざの詩 *       (日活)
4.拳銃無頼帖 抜き射ちの竜 (日活)
5.海から来た流れ者     (日活)
6.拳銃を磨く男 呪われた顔 (東映)
7.刑事物語 銃声に浮ぶ顔  (日活) 
8.素っ飛び小僧 *      (日活)
9.拳銃無頼帖 電光石火の男 (日活)
10拳銃を磨く男 深夜の死角 (東映)
11.拳銃と驀走       (新東宝)
12.はったり二挺拳銃     (松竹)
13.拳銃無頼帖 不敵に笑う男 (日活)
14.疾風小僧         (日活)
15.弾丸大将         (東映)
16.みな殺しの歌より 拳銃よさらば (東宝)
17.弾痕街の友情       (大映)
18.拳銃無頼帖 明日なき男  
(日活)
19.コルトが背中を狙ってる  (日活)
20.俺の故郷は大西部     (日活)

*「やくざの詩」は、ゲルニカ(スペインの銃)を巡っての話。「小僧シリーズ」は主人公が全て拳銃の名手。日活映画が11本。

 

■南海の狼火 1960.9.3 封切
 ファンキーハットにスーツ+サングラス

 当時も、このスタイルの帽子が流行していたものと思われる。設定としては都会から田舎にやってきた風来坊の設定なので、洗練されたスーツに、ちょっと崩したファンキーハットがポイント。これにレイバンの定番・ウェイファーラーと来れば、当時はこのスタイルが巷にあふれたのではないかと容易に想像できます。まさに、当時のあんちゃんスタイルをリードしていたんでしょうね。私? このスタイルが好きです。名画座で再上映された頃に、これに近いスタイルで映画館に行きました(笑)。

 


 

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■大草原の渡り鳥 1960.10.12 封切
 フリンジ・ウエスタンジャケット(プルオーバータイプ)

 前見頃と袖にフリンジを配したデザイン。西部劇『ジャニー・ギター(大砂塵)』に登場するようなフリンジ・ジャケット。もちろん、こちらの方が洗練されているのは間違いない。フロントファスナーでプルオーバーで着用するため、かなりフィット感があるもよう。これに首には赤いチーフ。それから、アロウ・ラインのワンポイントアクセントが入ったブーツがたまらない。当時は、このスタイルを真似てジャケットが沢山つくられたのではと想像してしまいます。

 

 

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■大暴れ風来坊 1960.11.16 封切
 ショートコート・ジャケット(エンブレム付)&スーツ

 去年の秋あたりも大流行したようですが、この当時もショートコートが凄く流行していたようです。オフホワイトのベルト付きのデザイン。ウールタイプのショートコートにソフト帽をかぶると、銀座旋風児スタイルになったりもします。それは、さておき、このスポーツコートのエンブレムに注目してください。ウィンチェスターライフルが2挺交差しているデザインの刺繍に"MITE GUY"の文字があります。(関連ページ)裏地も赤系をベースとしたタータンチェックが若さを感じさせます。後半にはスーツスタイルで登場します。もちろん、エンディングもスーツで汽車に乗り去って行きます。ちなみにライバルの錠さんのスタイルは牧師のスーツのようなコスチューム。前作は坊主スタイルだったところに関連づけたおもしろさが見られます。

 

 

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■波濤を越える渡り鳥 1961.1.3 封切
 ブレザーコート&シャツスタイル

 今回は波濤を越えるため盛装してみました。珍しく、いきなりジャケットスタイルで登場。三つボタン二つがけのジャケットにポケットチーフ。シブいカラーのレジメンタルタイをした渡り鳥。これは、ギターの色に合わせてコーディネイトされたものでしょうか。スチール撮影が先なのか?ロケ撮影後のスチール撮影なのかは不明ですが、ロケスナップを見ても、このスタイルが多く見られます(香港・バンコク)。
 後半は南国に合わせたシャツスタイルで登場。なんといっても、クライマックスシーンでの素肌に銃のホルスターを付ける…これに極まるものはありません。

 

 

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■風に逆らう流れ者 1961.4.9 封切
ウエスタンハット&ジャケット

 ここでのスタイルは個人的には「ちょっとなぁ」と思わせます。何故かというと、カウボーイハット(テンガロンまで行かない)が、あまりにもイージーなつくりなものだったので、その辺にあった小道具を使ったのかと思ってしまうほど。しかし、ストーリーが進む内に、そんなことは忘れさせてくれます。なんといっても、そんなことには関係なく動き回る飛び跳ねるこの力強いアクションに圧倒されます。『海から来た流れ者』で使われたムチが復活するのも見物。それに途中で、このムチが何かに引っかかるという小技演出もうれしいです。決してスーパーマンではないんですよ。流れ者にはスキもあります。そのあたりも、とっても人間くさくていいです。

 

 

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■大海原を行く渡り鳥 1961.4.29 封切
 騎兵隊スタイル

 騎兵隊風ですが、あくまでもオリジナルデザインです。冒頭でウインチェスターライフルが使われるあたりからも完全にウエスタンを意識したものですね。アクセントに首にはチーフ、ベルトにはロープ仕様の武器(これの名称は何でしょう?)がアクセントになってます。このあたりは初めからガンベルトをすると、まんま西部劇になってしまいますから、よく工夫されていますね。この作品はライバル役の藤村有弘の「つぶての竜」の中国人風キャラクターといい、無国籍ムードたっぷりの一編です。

 

 

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■渡り鳥北へ帰る 1962.1.3 封切
 ファー付レザーコート&タートルネック

 この映画公開前後(宣伝スチールなどの影響)、革ジャンやレザーコートに白のタートルセーターを組み合わせたスタイルが流行したと思われます。このスタイルで多くの若者が映画館を訪れたのでしょうね。まず、歌の「北帰行」が大ヒットし(他の歌手の競作が沢山出ました)、本編の制作につながりました。渡り鳥シリーズの新作を待ちかねた人が多かったと思います。ここに来るまでには、ヘリに乗ってビラをまいたり、海の男になったり、山の現場に行ったり、ある時はジェット機に乗ったり、黒い傷痕のムードに浸って来たのです。
 今回のスタイルは、上質レザーに裏地が毛皮で仕上げられています。前身頃の一直線に切り替えられたヨークと、くるみボタンがポイント。白のタートルセーター、ブルーのパンツとのシンプルな組み合わせが好感を持てます。ブーツにパンツの裾を入れたのもおしゃれ。ライバル役の郷えい治さんのダッフルコートにも注目!

 

 

 

 

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文中、敬称は全て省略させて戴きました。ご了承下さい。なお、内容につきましては個人的な思い入れであることを宣言します。間違いなどがありましたら、気軽にご指摘下さい。

参考資料:「ストリートファッション1945-1995」若者スタイルの50年史・アクロス編集室編/パルコ出版


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