1971年にクラウンレコードから発売されたアルバムが、2005年に紙ジャケットのCDアルバムとしてミニサイズのアルバムが再発売された。この頃は、芸能生活50周年を契機に様々なものが発売された中のひとつ。ちなみに紙ジャケットアルバムは他にも「昔の名前で出ています~小林旭オリジナルアルバム」「アキラの兵隊ソング」も同時発売されている。

「小林旭 夜に唄う ナレーション入り 純子」は、夜に出会った男と女のさすらいのドラマといおうか、根っこの部分では“さすらい”のスピリッツが流れている。ほんの一瞬でも心を寄せ合った男と女のドラマがそこにあり、それを辿るような曲の構成となっている。他のアルバムにも収録されている同じ曲であっても間に入るナレーションを聴くと、歌の世界がより深くなる。
1971年の発売当時は20歳余りのひよこだったので、この夜の世界が理解できずにいた。むしろ、爽やかでもある叙情歌に惹かれていた。だから、同じ頃に出た「知床旅情 北帰行 小林旭 抒情歌集」のアルバムを擦り切れるほどに夢中になって聴いていた。
しかし、このアルバム「純子」のナレーション、構成には胸を打たれた。

 


■収録曲

<A面>
1.純子
2.ごめんね
3.身の上ばなし
4.惜別の唄
5.泣くなさすらい
6.送春賦
<B面>
1.ついて来るかい
2.さすらいの祈り
3.落日
4.旅の灯り
5.若き旅人
6.北帰行

■アルバムのナレーションを紹介します。こうしたナレーション入りアルバムは他にもありますが、この一編は人生の深さを感じさせてくれるような気がします。
 

死ぬほど 惚れあったことのない人には・・・ 
惚れあったために
心中しなければならない人間の心なんぞ 
わかるもんじゃありませんよ。
以前・・・
私は ある女がふともらした言葉を
今でも思い出すことがあります。
芯そこからのよろこびを味わったら 
責め殺されても本望だって・・・ 
私はそこに おろかではあるが 美しい女の 
真実を感じるんですよ。
女と 男の 本当のあまさやにがさは
命がけで惚れてみなけりゃ
わからないものですよ。
 
 ●純子
 ●ごめんね
 
あれは、今から五、六年前だったでしょうか。 
ある酒場の女に、惚れたことがありました。
その女のもつ 妙に淋しげな風情に 私は
愛情というよりもむしろ 同情をいだいて
いたのかもしれなかった。・・・・
 
ある晩、
あの女の背負ってるものが、どんなものであるか、
せめて聞くだけ聞いてやるべきだったと
友人に話したところ その友人は笑いながら、
こういいましたよ。「しっかりしろよ、おまえは
うぶだから そんな風に思うのさ
あの女たちは 自分の背負ってる重荷の話なんぞ
しやしないよ。きけば おんば日傘で育ったと
笑いとばされるのがおちさ」
そう云われましたよ。
今おもえば 若かったんでしょうネ
  
  ●身の上ばなし
  ●惜別の唄
 
 女には家があり かえる自分の巣があります。
 でも男には 自分の巣がない
 男はいつも 孤独なんですよ。
 男の本当の良さなんてものは
 一生かけても 女には
 分かるもんじゃありませんよ。
 こうして男同士 一緒に呑むのも
なにかの縁でしょうネ・・・・
  
  ●泣くなさすらい
  ●送春譜
 
世間からも、仲間からも、友人からも
見放されたとき
私は 知らず知らずに、女のアパートの階段を
のぼっていたんですよ。
はずかしい話
女の胸に顔をうずめながら、
はじめて深い安らぎを感じました。
まるでおふくろに抱かれてるような
感じなんですよ。
 
  ●ついて来るかい
  ●さすらいの祈り 
 
男も女も所詮ひとりぼっちなんでっしょうかネ
肌と肌を触れ合っていても
真実二人には なれない
いくら強烈な陶酔や 感覚にひたりながらも
さめたあとの あのなんとも云えないむなしさ
そのくせお互いに なにかを求めて結びつく
・・・・時には傷つき 苦しむことがある・・・・
それを承知しながらもネ・・・・
  
  ●落日
  ●旅の灯り
 
そりゃ私だって、若い頃にゃ、ずいぶんと無茶を
したし、親を泣かせもしました。
人間の悲しいのは
あとになってばかなことをしたなと、気づく
ことですネ。 イヌやネコはそんなこと気づきやしません
こんな私の人生でも 生きてゆくために
いろいろなことがあるものですよ・・・・
 
    ●若き旅人
    ●北帰行
 
                <構成:大矢弘子>

 













いかがでしょう、歌の間に小林旭さんの声でナレーションが入る。そして、当時の発売曲のみでドラマチックに構成された内容は絶妙だと思われませんか。映画、歌、書籍が大ヒットした「愛と死をみつめて」の歌の作詞家・大矢弘子さんならではのナレーション制作・構成だと思います。
また、小林旭さんの哀愁を帯びた声でささやかれると、女性は特にたまらないでしょうね。


1.ズンドコ節
2.とかくこの世は住みにくい
3.銀座旋風児
4.ダイナマイトが百五十屯
5.恋の山手線 

 
1.ギターを持った渡り鳥
2.さすらい
3.北帰行
4.惜別の唄
5.口笛が流れる港町

 これらのアルバムは、現在では入手困難かと思います。消費税が5%の頃に購入したものです。100円商品が並ぶ中で、500円(税別)はユニークな存在でした。まさに発見時は小躍りしました。楽曲としては既に持っているものばかりですが、何かスペシャル感が漂っていて、すぐに店頭からは消えるものと思いました。
 コロムビアミュージックエンタテインメントの企画であるアルバムは、他にも

  • 守屋 浩
  • 島倉千代子
  • こまどり姉妹
  • 村田英雄(2枚)
  • 都はるみ(2枚)

   が同時に発売されていました。